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2020年度の温室効果ガス排出量、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、過去最小の11億5000万㌧となった。「コロナ後」の気候政策の実効性が問われる(RIEF)

2022-04-19 16:09:11

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 環境省が発表した「2020年度の温室効果ガス排出量(確報値)」は、排出量が前年度比5.1%減の11億5000万㌧と1990年度以降で、最小となった。新型コロナウイルス感染拡大による製造業の生産量の減少や、旅客・貨物輸送量の減少等によってエネルギー消費量の減少等が大きかったことが影響した。環境NGOらは「(減少は)コロナの影響で、気候政策の効果とは言えない」と指摘している。21年度のリバウンドをどう抑制できるかが問われる形だ。

 

  環境省によると、20年度の排出量確報値から、同年度の森林等による吸収量(4450万㌧)を差し引くと11億600万㌧で、政府が2030年度46%削減の目標年度とする2013年度比では21.5%減と、目標値の半分近くを削減できたことになる。同省は、2014年度以降、7年連続の減少、90年度以降最小で、直近3年連続で最小量を更新していると、強調している。

 

 また日本は国連気候変動枠組み条約事務局に対して、20年度目標として「2005年度比3.8%減以上」を示しているが、今回の吸収源を含めた削減量はこの目標を上回る20%削減を達成した、としている。ただ、同目標は当初は「90年度比25%削減」としていたものを、大幅に緩和して再提出した経緯がある。

 

 環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)は、「(20年度目標は)オランダ最高裁が同国政府に国際的コンセンサスの最下限として2020年までに1990年比20%減から25%減に引き上げを命じたことに照らしても、本来、低きに過ぎたもの」と指摘。20年度目標の修正自体が国際的コンセンサスからかけ離れた政策判断だったと批判している。

 

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 また今回の「大幅削減」は、環境省自体も認めるように、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって製造業の生産量の減少、旅客及び貨物輸送量の減少等に伴うエネルギー消費量の減少等という一時的なマイナス要因に負うところが大きい。特に、電力等エネルギー転換部門からの排出量は全体の4割と高い割合を維持し、化石燃料依存から脱却していないことも明らかだ。

 

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 火力発電所の発電電力量がこの10年で石炭、LNGがほぼ横ばいを続けている。2020年の電源構成の割合はそれぞれ天然ガス39%、石炭31%と大きなウエイトを占めており、排出量を押し上げる原因となっている。冷媒用途のオゾン層破壊物質からの代替に伴うハイドロフルオロカーボン類(HFCs)は引き続き増え続け、2013年度比61.0%増加となっている。

 

 「コロナ後」の排出削減策として、政府はグリーンイノベーション戦略として、水素、アンモニア、CCUSなどを重点対策に掲げている。だが、アンモニア混焼率は20%程度を目指しており、その場合の実質的削減量は4%程度でしかない。水素エネルギーもオーストラリアから輸入した川崎重工業の「すいそ ふろんてぃあ」号が、現地の港で火災事故を起こしながら、その事実をひた隠しにするなど、「目先」を繕う政策に終始しているように映る。

https://www.env.go.jp/press/110893.html

https://www.env.go.jp/press/files/jp/117897.pdf