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経団連、「2050年ネットゼロ」への脱炭素の政策提言。年2兆円のグリーン国債発行。長期運転と小型原子炉等で原発政策の維持・強化。排出権取引制度の検討も初めて明言(RIEF)

2022-04-27 06:03:55

keidanren001キャプチャ

 

 経団連は26日、2050年のネットゼロ目標に向けた、政府に対する政策提言を発表した。経済産業省が推進する「グリーントランスフォーメーション(GX)」を全面的に支援する姿勢を打ち出し、2050年までに合計約400兆円規模の投資が必要として、毎年2兆円規模のグリーン国債の発行を財務省に求めた。脱炭素では引き続き原発推進の旗を降ろさず、小型モジュール炉(SMR)などの開発・建設を求めた。カーボン価格化では、長年、批判し続けてきた排出権取引制度の検討を初めて認めた。

 

 経団連の提言は「グリーントランスフォーメーション(GX)に向けて」と題した報告書。基本的に経産省による政策を支援している。十亀雅和会長は「岸田政権は『新しい資本主義』の実現に注力しており、経団連が掲げる『サステナブルな資本主義』と軌を一にする。今提言が目指すGXは『新しい資本主義』に欠かせない『サステナブルな地球環境』の実現はもとより、投資主導で経済拡大を目指す成長戦略の中核となる」と位置付けた。

 

 提言の主な内容は、これまでの経団連の主張を踏襲している。柱となる「GX政策パッケージ」では①原子力利用の積極的推進②エネルギー供給構造の転換 (再エネ主力電源化の一方で、火力発電のCCUSを使った維持を掲げる)③産業構造の変化への対応④攻めの経済外交戦略⑤グリーンディール⑥サステナブルファイナンス⑦カーボン プライシング⑧電化の推進・ エネルギー需要側中心の革新的技術の開発、の8分野を示した。

 

  目新しいのが、政府の財源に踏み込んだグリーン国債の提言と、排出権取引制度への前向き姿勢だろう。前者については、国際エネルギー機関(IEA)の推計に基づき、2050年のネットゼロに必要な世界の年間総投資額4兆㌦に対して、日本のCO2排出割合約3%を踏まえ、日本の必要投資額を年約14.2兆円と試算。50 年までの累計を約411.8兆円とした。このうち、政府負担分として年平均約2兆円のグリーン国債(GXボンド)の発行を求めた。

 

 すでに先進国では米国以外の国々がグリーン国債を発行して、調達資金をグリーン・サステナブル事業に充当している。米国の場合もバイデン政権が年間約8.4兆円規模のグリーン事業支援を推進しているとしている。これまで日本の財務省は、内外からグリーン国債の発行を打診されてきたが、財政規律が現状以上に緩んでしまうことを懸念し、拒絶の姿勢をとってきたとされる。

 

 経団連は、「GXに向けた投資が今後の成長をもたらすものであることに鑑み、『GXボンド(グリーン国債)』の発行等で賄うべき」と主張している。グリーンボンドでの調達資金を日本版グリーンディールに充当するとしている。日本版のグリーンディールの柱には原発再稼働・長期運転・新設を盛り込んでいる。

 

現行の原発政策では「原発20%」を2060年には維持できないことの説明
現行の原発政策では「原発20%」を2060年には維持できないことの説明

 

 現在、国内の原発は停止中を含め、10基が再稼働扱いになっている。経産省は2050年に電力の20%を原発由来とする計画だが、運転期間を60年に延長した場合でも、50年に再稼働23基を確保するのが精一杯で、60年には8基のみとなる。このため経団連は、原発の長期運転化に加え、小型原発(SMR)の開発、新型原発への建て替え等を求めていく方針だ。

 

 再エネについては洋上風力等を軸に「主力電源化」をうたっているが、石炭・天然ガスを燃料とする火力発電についても、水素・アンモニアの混焼から専焼化、さらにCCUSの実装化によって「脱炭素化」するとしている。原発の再稼働強化に加えて、火力発電の維持策も「裏主力電源」として温存していくことを政府に求める姿勢だ。

 

 カーボンプライシングについては、経産省は、企業の自主的な排出量クレジット等を売買する「GXリーグ」を基本構想として提唱している。経団連は同構想を支持するとともに、「ポリシーミックスを不断に検討していくことが重要」とし、その検討対象として、炭素税ではなく、排出権取引制度をあげた。

 

カーボンプライシング政策の整理
カーボンプライシング政策の整理

 

 提言は、カーボンプライシング策として、環境省と財務省が推奨する炭素税については①排出量が固定できないうえ、排出削減効果は限定的②排出削減効果を上げようとすれば、高率の課税となり、国民生活の負担になる③産業の国際競争力を損なう恐れが高い、等の理由をあげて「少なくとも現状では合理的とは考えられない」とした。

 

 キャップ&トレード型の排出権取引制度(ETS)については、EUのほか、中国、韓国等も導入している。同制度の評価として、①削減の確実性を担保できる②産業競争力への影響(国際競争の状況や代替技術の進展)等を柔軟に考慮できる③日本の実情に即した適切な制度設計ができれば有力な選択肢、と位置付けた。

 

 これまで経団連はETSに対しては「統制経済政策」として強い嫌悪感を示してきた歴史がある。だが、経産省主導の自主的なクレジット売買だけでは、国内市場で十分なプライシングメカニズムが働ないとみられるほか、国際的にETSが主流化していること等から、プライシング政策へのスタンスを変更したとみられる。

 

https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/043_gaiyo.pdf

https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/043_honbun.pdf