HOME8.温暖化・気候変動 |国連の「気候野心サミット」で、岸田首相の発言機会は国連によって「拒否」されていたことが判明。「GX」戦略の気候貢献の乏しさが、国際的にも確認された格好に(各紙) |

国連の「気候野心サミット」で、岸田首相の発言機会は国連によって「拒否」されていたことが判明。「GX」戦略の気候貢献の乏しさが、国際的にも確認された格好に(各紙)

2023-09-23 11:53:28

UNsummitキャプチャ

 

 各紙の報道によると、20日にニューヨークの国連本部で開いた「気候野心サミット」で、日本の気候対策の遅れを理由として、岸田首相の同サミットでの演説が、国連によって拒否されていたことがわかった。日本政府の「野心」の乏しさから、国際的に「落第」の評価を得た形だ。岸田首相はサミットへの出席を見送った。国連のグテレス事務総長は、サミットでの演説で、温暖化の影響による異常気象が世界各地で頻発していることに厳しい危機感を示し、地球温暖化に歴史的な責任を負う主要国の責任履行を強く求めた。

 

 温室効果ガス(GHG)排出量が最も多い中国や、米国、インド等の代表も発言しなかった。報道では、日本政府は岸田首相の参加を想定し、訪米前に演説の草稿を用意していた、という。サミットで演説の機会が与えられなかったことに対して、日本政府関係者は「スケジュールの調整がつかなかったのではないか」と説明したとされる。だが、国連関係者は「(出席の)基準を満たさなかった」と明確に指摘しているという。

 

 グテレス氏はこの夏、世界のGHG排出量の8割以上を占める主要20カ国・地域(G20)にサミットの招待状を送付した。招待状の内容は、画一的なものではなく、各国のエネルギー事情などを踏まえ、それぞれの国の課題にも言及したとしている。そのうえで、気候変動問題を解決するための各国の歴史的責任を踏まえた、高い「野心」(先進的な排出削減目標や政策の提案と実施)を盛り込んだ具体的な計画を示せる指導者にのみ、サミットでの発言権を与えることを示唆する内容だったとされる。

 

 パリ協定では気候変動激化による地球全体の壊滅的な影響を避けるため、地球の気温上昇を産業革命前より1.5℃以内に抑えることを目指し、各国は国が定める気候変動対策(NDCs)を公約している。日本の場合は、2030年度に中間目標として2013年度比46%削減、50年にはネットゼロを掲げている。だが、日本は中間目標を含めて、現状の対策のままでは掲げた目標の達成は不可能との分析が出ている。

 

 20日のサミットでは、環境対策で進んでいるカナダやEU、オーストリア、南アフリカ等の約40人の代表者らがそれぞれの対策を説明した。しかし、中国、米国、インド、日本等の発言機会はなかった。カナダやEU等は温暖化対策の「先行者と実行者」と位置付けられた一方で、発言機会を与えられなかった主要国はそれぞれ「劣後者で、行動の乏しい国」と、峻別された形だ。

 

 サミットを主催したグテレス国連事務総長は、この夏、特に地球全体が過去最高の気温上昇を記録し、各地で熱波や、森林火災、干害等の気候災害が展開されたことを踏まえて、「化石燃料から莫大な利益を得る既得権益者たちによる対応の遅れ、圧力、むき出しの強欲によって失われた時間を取り戻す時だ」と危機感を強調した。

 

 「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」を掲げる日本政府にサミットでの発言の場が与えられなかったのは、GX政策が「名ばかり」で、1.5℃目標達成に貢献しないばかりか、石炭火力温存や原発依存等の現行のエネルギー依存を先延ばしする狙いでしかない点を、国際的にも「見抜かれた」形でもある。

 

 グテレス事務総長は、今回のサミット開催前から「(サミットを)ナンセンスでないものにしたい」と意気込んでいたという。各国の経済力による「順番」で発言機会を配分する従来の形式にこだわらず、気候対策での実績と、本当の意味の「野心」を示せる国にだけ、発言権が割り振られる「前例」が示されたことで、11月に予定する国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)での交渉も、従来の「先進国」対「途上国」という構図に加えて、「気候対策先行国」対「劣後国」の責任分担と実行という、新たな図式も鮮明になりそうだ。

https://www.un.org/climatechange/climate-ambition-summit?gclid=Cj0KCQjw9rSoBhCiARIsAFOipln9Wwoi6QdcxvbfK3m9Lf8v_4-CCNisUJjUGrgG58fRbG9dgyqgxIUaAsD0EALw_wcB

 

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230923&ng=DGKKZO74691020S3A920C2FF8000

https://mainichi.jp/articles/20230921/k00/00m/030/366000c