HOME8.温暖化・気候変動 |先週の国連「気候野心サミット」で、国連が「気候政策リーダー国」と「気候ウォッシュ国」を明確に線引き。日本は、米、中国等とともに「ウォッシュ国」扱いに(RIEF) |

先週の国連「気候野心サミット」で、国連が「気候政策リーダー国」と「気候ウォッシュ国」を明確に線引き。日本は、米、中国等とともに「ウォッシュ国」扱いに(RIEF)

2023-09-25 12:45:17

UNsummitoキャプチャ

(写真は、9月20日に開いた国連「気候野心サミット」の模様=Climate Home Newsより: IISD/ENB – Diego Noguera

 

 先に開いた国連の「気候野心サミット」で日本の岸田首相が演説を国連から「拒否」されたが、「信頼できる気候政策と同計画」を持っている国として演説を「許可」された国は、独、仏、カナダ、EU等の34カ国・機関だったことがわかった。米、中国等も演説の機会を与えられなかった。気候政策を積極的に推進している「リーダー国」と、出遅れているのに、「やってる感」を強調する「グリーンウォッシュ国」とに区分された格好だ。

 

 国連の気候サミットでスピーチしたのは、OECD加盟国では、欧州勢の独、仏、スペイン、オーストリア等の10カ国とEUで、合計11国・機関と最も多かった。加えてカナダ、チリ、コロンビアの各国が名を連ねた。アジア勢では、タイ、ベトナム、スリランカ、ネパール、パキスタンの5カ国。温暖化の加速で影響を被っている島嶼部諸国としてマーシャル諸島、サモア等、さらにブラジル、南アフリカ等も「リーダー国」扱いとなった。https://rief-jp.org/ct8/139126

 

UNSummito002キャプチャ

 

 34カ国・地域のほか、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、緑の気候気候基金(GCF)の国際機関のほか、企業を代表する形でドイツの保険大手Allianz、また米英は国としては対象外だが、積極的な気候政策を展開している米カリフォルニア州、ロンドン市の代表がそれぞれ演説の機会を与えられた。また環境NGOの代表として Asian Peoples’ Movement on Debt and Development(APMDD)が選ばれた。

 

  サミットでは、カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム(Gavin Newsom)氏が「気候危機は、化石燃料危機だ。化石燃料事業者たちは、気候変動対策に取り組む人々を馬鹿にし敵対している」と強く石油・ガス事業者たちを非難した。

 

米カリフォルニア州知事のニューサム氏
米カリフォルニア州知事のニューサム氏

 

  チリのガブリエル・ボリッチ大統領も、ニューサム氏の化石燃料事業者への批判に呼応し、「そうだ。気候危機は化石燃料危機だ。われわれは化石燃料依存から脱しなければならない」。コロンビア大統領のグスダボ・ペトロ氏も、同国自体が石油・石炭を輸出しているが「わが国は化石燃料の輸出に依存し、そうした輸出で生きている。しかし、すべての国々にとっての真のゴールは、短期的に、石炭、石油・ガスの製造と供給をゼロにすることだ。そうしないと、多くの命が救われなくなる」と賛同した。

 

 ブラジル環境相のマリナ・シルバ(Marina Silva)氏は、ルーラ・ダシルバ大統領が、前任のボルサナロ政権が削減した「気候野心」と気候削減目標の縮減を改めことを踏まえ、「われわれは排出削減へのコミットメントとして、現行の2025年削減目標の37%を48%に、30年目標を50%から53%に引き上げる」と国際公約した。いずれも日本政府の公約を大きく上回る。同氏は「これらの目標は、ブラジルが気候変動に対して負う歴史的な責任の少なさとは整合しないが、われわれの野心を示すもの」とした。

 

 EU欧州委員会委員長のウルズラ・フォンデアライエン(Ursula von Der Leyen)氏は、COP28に向けて、世界の排出量を2025年までにピークアウトさせることと、対策を施していない化石燃料 (unabated fossil fuels)を2050年よりも十分に前倒しして段階的に廃止することを、グローバル基準とすることを進めると述べた。

 

 ドイツのオラフ・ショルツ(Olaf Scholz)首相は、脱原発、脱石炭火力を進めるドイツとして、再生エネルギー促進策へのコミットメントを強調した。そのうえで、先のインドでの主要20カ国(G20)サミットで、2030年までに再エネ能力を3倍増させることで合意したことを強調した。フランスの経済・財政・産業・デジタル相のブルーノデ・メール(Bruno Le Maire)は、GCFに対する新規の拠出として16億1000万ユーロとすることを表明した。

 

 サミットの最後のスピーチとしてグテーレス国連事務総長は、サミットに参加できなかった米中、日本等の主要排出大国を前提として「(彼らを)囚人とするのではなく、あなた方と歩調を合わせられるように導いていこう」と呼び掛けた。

 

 環境NGOのE3Gアナリストのトム・エバンス(Tom Evans)氏は「世界の主要プレイヤーがこの場に呼ばれなかったことは、いかに気候政治が困難になっているかを示すものだ。COP28の開催国のアラブ首長国連合(UAE)は、11月の会合に向けて、今回、国連サミットに呼ばれなかった国々を議論の場に戻すために新たな戦略を検討しなければならない」と指摘。COP28が世界にとっての正念場になるとの見方を示している。

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.un.org/sites/un2.un.org/files/climate_ambition_summit_-_morning_plenary_-_speaking_list.pdf

https://www.climatechangenews.com/2023/09/22/at-un-climate-summit-big-polluters-absence-speaks-volumes/