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三菱重工が米電力と、石炭火力発電所排ガスからのCO2回収・貯留実証試験をスタート(FGW)

2012-09-17 11:02:24

三菱重工が参画する米国でのCCS実証実験プラント
 三菱重工業は、米国大手電力会社 サザンカンパニー(Southern Company)と共同で石炭火力発電所排ガスからの二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)実証試験を始めた。石炭火力は排ガス中にばいじんなどの不純物を含んでおり、これらを対象に日量500トン規模のCO2回収と貯留を一貫して行う。同社ではこの規模での実証試験は世界で初めてとしている。

 試験プロジェクトは、米アラバマ州にあるサザンカンパニーのバリー火力発電所内に建設した石炭火力発電所の排ガスCO2回収実証プラントを活用する。排ガスから回収・圧縮したCO2を約12マイル西にあるシトロネル・ドーム(Citronelle Dome)の地下3,000~3,400mにある帯水層に貯留する。同プロジェクトは米エネルギー省(DOE)の温室効果ガス対策プロジェクトの一環として行われる。

 三菱重工はプロジェクト全体の中で、CO2の回収・圧縮の基本計画からエンジニアリング、コア機器の供給、さらに実証運転時の技術サポートまでを担当する。実証試験は昨年6月から始まっている。実証試験用プラントは、当社がサザンカンパニーと共同で建設した世界最大規模(500トン/日規模)の装置で、排ガス前処理設備(脱硫)、排ガスCO2吸収・再生設備、CO2圧送設備、ユーティリティー設備などで構成される。CO2回収能力は15万トン/年で、CO2回収率は90%超。
 CO2回収に当たっては、三菱重工が関西電力と共同開発した高性能な吸収液(KS-1TM)を用いたKM CDR Process®(米国登録商標)と呼ばれるプロセスが採用されており、他の方式に比べエネルギー消費量が大幅に少ないのが特徴という。

 共同試験の相手となるサザンカンパニーグループは、総発電容量4,200万kW以上の発電施設を所有する米国最大級の電気事業者で、同国東南部で約440万の顧客向けに電力を供給している。

 三菱重工は、天然ガス火力や重油火力の排ガスからのCO2回収事業で、世界トップクラスの実績を有しており、化学工場向けに10基の商用機を納入し、1基を建設中。一方、石炭焚き火力からのCO2回収については、今回のバリー火力発電所での稼働実績のほか、2006年から国内で地球環境産業技術研究機構(RITE)と電源開発(J-POWER)の協力を得て10トン/日規模の実証試験を実施している。
 CCS技術の実証性が、世界的に使用量の多い石炭火力でも安定的かつ効率的に実施できることが証明されると、シェールガスの普及とともに、原子力依存からの脱却にはずみがつくとの期待もある。世界の重電メーカーは原子力発電の継続を求める一方で、大規模な再生可能エネルギー源の開発とともに、既存化石燃料のクリーン化投資にも力を入れているといえる。長期的には、環境負荷を制御し、効率的なエネルギー利用が必要となる。

三菱重工が参画する米国でのCCS実証実験プラント


http://www.mhi.co.jp/news/story/1209145253.html