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日本の再生可能エネ技術は世界のトップを行くが、アメリカ人の“突飛な発明”も侮れない 「連ダコ発電」だなんて!(National Geographic) 連凧型風力タービン、気球で浮揚

2012-10-02 13:05:05

カリフォルニアの風力タービン発明家ダグ・セルサム氏が開発した「スカイサーペント(Sky Serpent)」。
カリフォルニアの風力タービン発明家ダグ・セルサム氏が開発した「スカイサーペント(Sky Serpent)」。


アメリカ、カリフォルニア州の風力タービン発明家ダグ・セルサム(Doug Selsam)氏が開発した「スカイサーペント(Sky Serpent)」は、小さな風力タービンブレードが連凧(れんだこ)のようにつながっており、バルーンで空に揚がる姿は、まさに“空飛ぶヘビ”だ。

「2009年にカリフォルニア州のチコとオーロビルで開催された“高高度風力会議(High altitude wind power conference)”では、実際に動いたプロトタイプはスカイサーペントだけだった」とセルサム氏は振り返る。「ボーイングやハネウェルなど、大手メーカーはまず手がけない分野だ」。スカイサーペントは「Popular Science」誌の2008年度優秀発明賞を受賞している。

 スカイサーペント搭載のマルチロータータービンは、部品数や製造コストを抑えながら、一般的な設計と同じ発電量を確保している。ローターを複数使用するとブレードの風が干渉してしまうが、スペースの取り方を工夫してこの問題を回避しているという。

 風力専門家のポール・ガイプ(Paul Gipe)氏による第三者試験が2008年と2009年に実施されたが、いずれも技術的トラブルにより完了しなかった。ただし、ガイプ氏はスカイサーペントについて、「非常に強力で、今後も研究する価値がある」と報告している。

◆気球とタービンを一体化したモデルも

 カナダ、オンタリオ州のマゲン・パワー(Magenn Power)社も、気球を使って上空の風力を活用する発電機を2005年から開発している。ヘリウムを充填した小型の気球「MARS(Magenn Air Rotor System)」は、上空約300メートルで浮遊し、100キロワットの電力を生み出すという。同じ規模の地上発電では、ある程度大型の風力タービンが必要だ。

 楕円形の気球には羽根が付いており、風を受けると水平軸に沿って回転、発電機を動かす。地上に降ろした導電性のテザーで電力を供給する。

 同社によれば、ヘリウム気球は高高度の強い風の中でも非常に安定しており、アメリカ連邦航空局(FAA)の安全性に関するガイドラインにも適合するという。まだ開発段階だが、石油掘削施設や山小屋など、遠隔地での利用に最適と謳われている。

 しかし、同社の主張には疑問の声も上がっている。新型風力タービンの設計に取り組むダグ・セルサム(Doug Selsam)氏は次のように指摘する。「MARSは最も効率が低いタイプのタービンを採用している。しかも空中に浮遊させるので、余計なコストがかかり、効率もさらに低下する。気球は風を受ける面積が大きいが、発電量にはそれほど貢献しない」。

 これらの疑問点に対する回答をカナダの本社に求めたが、まだ返事はない。また、Webサイトに掲載されているアメリカ本部の電話番号は不通になっていた。

◆空のヘビの将来

 ヘビメタ系のロッカーだったセルサム氏は、海や砂漠に何本ものスカイサーペントがたなびく光景を夢見ている。カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)から支援を受けており、開発した風力発電機のプロトタイプは100種類以上。また、コンセプトを実証するため、20ドル(約1500円)で凧型風力発電機を作り、デモを行ったこともある。

「通常の風力発電タービンは、小さなサイズから開発が始まった。ほぼ1世紀の間、サイズは変えないまま量産技術を培い、その後でようやく大型化していった。凧型の場合も、低コストで電気を生み出せたなら、最初の一歩としては及第点だ」とセルサム氏は話す。

 将来的には強い風を利用できる高高度まで上昇させる構想だという。「資源は空に渦巻いており、仕掛けは万全。技術開発への挑戦あるのみだ」。

 

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