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日本メーカーの石炭火力発電輸出増大 震災以降で原発20基分の2千万キロワット 途上国の温室効果ガス排出量増大 国際的批判を受けるリスクも(FGW) 

2013-04-20 22:05:14

CO2を大量排出する石炭火力発電所
CO2を大量排出する石炭火力発電所
CO2を大量排出する石炭火力発電所


東日本大震災後、東芝、日立製作所などの日本の重電メーカーによる途上国向けの石炭火力発電所プロジェクトが、発電量にして2000万kw、原発20基分にも上ることがわかった。石炭火力は発電コストが安いことから、途上国での引き合いが多いが、同時に温室効果ガス排出量は天然ガス発電などよりも約3割多いことなどから、国際的な環境NGOなどが「石炭火力撲滅キャンペーン」を展開している。日本のメーカーの輸出攻勢はこうした潮流に逆行するとの批判もある。

 

また2015年に向けて国際交渉を進めている地球温暖化対策でのポスト京都の国際的枠組みでは、途上国での温室効果ガス削減が最大の課題となっており、日本の石炭火力輸出攻勢がこうした国際的課題と整合性があるのかという議論にもなりそうだ。また生態系等を「自然資本」として価値化する国際団体の推計では、石炭火力は東アジア地域だけで年間4530億㌦の社会的コストを生み出しているという。温暖化の進行だけでなく、健康被害や大気汚染による多くの損害の原因となっている。

日本政府は二国間クレジットとして、途上国で排出削減事業を展開してそのクレジットを日本の削減努力に加える政策をポスト京都の枠組み交渉に向けて進めている。日本の石炭火力事業は発電効率がいいことから、こうした二国間クレジット事業にカウントしようという政府サイドの意向もあるようだが、相対的な温室効果ガスの低減効果を上回る大気汚染の増大や健康被害を考慮すると、二国間クレジットの対象になるのかという疑問もある。

 

石炭火力の原料となる石炭は、天然ガス(LNG)の三分の一ほどで、燃料価格の安さから、途上国でのエネルギー・電力源として活用されている。特に日本の石炭火力は発電効率が高いことで定評があり、電力需要が膨らむアジアの新興国や設備更新を急ぐ東欧などでの引き合いが強いという。日本政府も有望分野として支援しており、成長戦略にも石炭火力の輸出促進を盛り込む方針だ。