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世界的猛暑で大気汚染が深刻化 植物の大気汚染物質吸収量が減少のため(National Geographic)
2013-07-24 16:36:54
今月は世界各地で熱波が観測されているが、最新の研究によると、熱波の発生時にはこれまでの想定以上に大気汚染が深刻化する恐れがあり、人命にも影響するという。
植物による大気汚染物質の吸収量が高温下では減少するため、呼吸器合併症を発症する可能性が高まり、最悪の場合は死につながる。
イギリスのヨーク大学にあるストックホルム環境研究所(SEI)ヨーク支部の研究チームは、環境・食料・農村地域省(DEFRA)から資金援助を受けて、季節変化と植物の汚染物質吸収能力について研究している。
研究チームのリーダー、リサ・エンバーソン(Lisa Emberson)氏は次のように語る。
「オゾンを吸収する植物は大気汚染を緩和する機能がある。成層圏のオゾン層は有害な宇宙線から地球を守っているが、地表近くの対流圏にあるオゾンはスモッグの主成分で、人間の呼吸器系に刺激や炎症をもたらす」。
対流圏オゾンは、二酸化炭素やメタン、その他さまざまな揮発性有機化合物(VOC)が、自動車や工場の排気ガスなどに含まれる窒素酸化物と光化学反応を起こした場合に生まれる。
植物は通常、葉の表面の「気孔」という小さな穴を通じてオゾンを吸収する。しかし高温になると、水分を失わないように気孔を閉じる傾向がある。乾燥が進むほど、気孔をしっかりと閉じて水分を守ろうとする。
植物が気孔を閉じればオゾンの吸収量も減少するので、大気中にオゾンが蓄積されていくようになる。
エンバーソン氏の研究チームによると、猛暑に襲われた2006年夏のイギリスは、植物のオゾン吸収量が減って、死者が460人増えたと推定されるという。
「地球の対流圏オゾンの最大20%は、植物が吸収する。大気汚染における植物の役割をもっと深く知る必要がある。オゾンは温室効果ガスとしても機能するため、その意味においても、植物は気候変動対策で重要な役割を担う」。
オゾンで特に深刻な影響を受けるのは、ぜんそくや心臓病など、心臓血管や呼吸器に既に疾患を抱えている人々だ。極端に暑く乾燥している場合は、激しい活動を避けるように細心の注意を払う必要がある。
今回の研究結果は、オンラインジャーナル「Atmospheric Chemistry and Physics」に7月18日付けで掲載されている。
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20130723002