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国際温暖化交渉 米中が相次いで2020年以降の目標設定に前向き 取り残される日本 独ボンでの国連会合で(FGW)

2014-06-16 17:53:49

国連気候変動会議が開かれたドイツボンの会場
国連気候変動会議が開かれたドイツボンの会場
国連気候変動会議が開かれたドイツボンの会場


各紙の報道によると、ドイツのボンで開いていた国連気候変動の国際会合(15日閉幕)で、中国が国レベルで排出上限の設定を検討すると初めて公式に表明した。米国も会合前に温暖化ガス排出削減目標を発表しており、世界2大排出国が相次いで前向き姿勢を示したことになる。目標設定を示せない日本の”遅れ”が目立つ展開となってきた。

 

報道によると、会議に出席した中国の交渉団の解振華・国家発展改革委員会副主任は「できるだけ早く排出上限(キャップ)を導入する」と公式に発電した。実は、昨年から、中国が排出削減目標を設定するという観測は幾度か流れていた。実際に北京などの主要都市ではキャップ付きの排出権取引制度を実験的に行ってもいる。

 

しかし、この段階で、上限規制の受け入れを表明したことで、今後の国際交渉の焦点が、中国の上限がどれくらいになり、いつから実施するのかに注がれることは間違いない。中国がどれくらい本格的な目標設定を打ち出すかによって、他のインドやブラジルなどの急成長途上国の動きも大きく左右されるとみられるからだ。

 

中国の”返信”には、国内で激化するPM2.5問題等の環境問題が、このままでは経済発展のブレーキになりかねないという危機感があるとみられる。同時に、積極的に目標を打ち出すことで、先進国からの資金導入を急ぐとともに、国際交渉全体を有利に展開したいとの政治的思惑もあると推測される。

 

一方、京都議定書を離脱し、独自のスタンスをとってきた米国も、オバマ大統領が今回の気候変動会合が始まる直前に、国内の火力発電所から排出される二酸化炭素(CO2)を2030年までに05年比で30%削減する目標を公表するなど、国際交渉を意識した政策を打ち出している。2020年以降の国際枠組み交渉は、2015年末にパリで開く第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で国際合意を得る予定となっており、米中とも早めの政策カードを切ってきたのは、COP21でのリーダーシップ握ろうという狙いも透けて見える。

 

米中のCO2排出量を合わせると世界全体の4割を占めるインパクトを持っている。また両国のエネルギー構造は、石炭主導でシェールガスの埋蔵量の多さや、再生可能エネルギー発電の潜在力の高さ等、似たところが多い。このため、米国は中国の温暖化対策が本格化すると、米国の技術・資本の受け皿になると想定している可能性もある。中国側も、温暖化対応で米中協力関係を深めることができれば、政治的なギクシャク関係の打開にもつながるとの思惑も絡んでいそうだ。

 

これまで、国際的な温暖化交渉は、欧州が主導的役割を演じてきた。その欧州も、経済低迷の影響もあってCO2削減は一段と進んでいる。欧州はこれまでの実績を踏まえて、途上国を巻き込んで国際交渉を優位に展開する戦略をとっており、米中の新たな動きと、欧州の攻防がCOP21に向けた大きなベクトルになりそうだ。

 

国際的な交渉が駆け引き合戦の度合いを強めつつある中で、日本は2020年目標として「05年比3.8%減(90年比では3.1%増)」というきわめて低い水準しか示せていない。2020年以降については、まったく白紙の状態だ。政府は、原発の再稼動を見込めないため目標を立てられない、としているが、日本の原発問題への国際的理解が続くと期待するのは甘いと言わざるを得ないだろう。

 

このままだと、温暖化交渉での日本の存在感はほとんどない状態になりかねない。と言って、日本だけ低い水準の目標設定で済ませることができるかというと、各国とのバランス上、難しい。切るカードがない国は、貧乏くじを引かされる、というのが国際社会の常識であることを忘れてはならない。