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地球温暖化原因物質のCO2を 燃料や化学物質へ商品化。CCSの回収貯留も収益化の見通し(National Geographic)

2014-10-11 22:24:57

 CO2回収貯留(CCS)設備内のパイプやタンク。カナダのサスカワチュン州エステバンにあるバウンダリーダム発電所のCCS始動式にて。
 CO2回収貯留(CCS)設備内のパイプやタンク。カナダのサスカワチュン州エステバンにあるバウンダリーダム発電所のCCS始動式にて。
CO2回収貯留(CCS)設備内のパイプやタンク。カナダのサスカワチュン州エステバンにあるバウンダリーダム発電所のCCS始動式にて。


二酸化炭素(CO2)の排出量を削減し、地球温暖化を食い止めようという取り組みはなかなか進まない。だが、企業がCO2から利益を得ることができるとしたらどうだろう?

 

CO2が商品となる日はそう遠くなさようだ。米国だけでも多くの企業が、排出されたCO2を漂白剤、ベーキングパウダー、自動車のシート、オムツ、燃料などの日用品の製造に必要な化学物質に変換させられないかと試みている。これらの企業は環境保護に貢献しているだけではない。こうした試みは商業化されつつあり、企業は堂々と利益を追求している。ジェット燃料だけでも2010年の市場規模は2000億米ドルに達しており、将来性のあるビジネスとして注目されている。

「世界は炭素回収の方向に向かっている。これがビジネスになるとわかれば、ますます積極的に取り組む企業が増えるだろう」と、テキサス州オースチンの企業、スカイオニック(Skyonic)社のスポークスマン、ステイシー・マクダイアミッド(Stacy MacDiarmid)氏は語った。

同社は、発電所等、CO2排出量の多い産業拠点の近くにプラントを設置し、排出されるCO2を回収する。回収したCO2に塩や水を加え、電気を使って高純度の炭酸水素ナトリウム(重曹)、塩酸や漂白剤を生産する。同社は今月末にも最初の商業的CO2回収プラントを建設する予定で、この事業から5000万ドルの年間収益を見込んでいるという。

マサチューセッツ州ベッドフォードに拠点を置くジュール(Joule)社も注目すべき企業だ。遺伝子操作した藍藻を触媒にCO2と日光、水を化学反応させ、自動車用燃料を作る。

このテクノロジーではCO2という廃棄物から直接、燃料を作ることができるため、化石燃料を使用する必要がない。

ジュール社が開発する燃料は燃焼エンジン内で使用でき、理論上は電気自動車を利用しなくても、環境に負荷をかけずに自動車を走らせることができる。うまく行けば、この燃料は1バレル50ドル(1リットル当たり約32セント=約34円)ほどで販売される見通しだ。

大気中のCO2の有効利用はビジネスとしても、また環境保護の観点でも大きな効果が期待出来る。現在、温暖化対策の切り札とされているCO2の回収貯留(CCS)技術から大きなステップを踏み出すことになる。CCSとは、廃棄物からCO2を分離し、加圧により液体化して地中の適した地層に埋め、長期間貯留する技術だ。この方法を使えば、大気中からCO2を取り除くことはできるが、かかるコストが非常に大きいため、商業的なインセンティヴがない。

燃料やケミカルの分野は市場規模が大きいため、CO2を有効利用すれば、利益が生まれるだけでなく、大気中のCO2量を大幅に削減することができる可能性がある。

プラスチック容器や塗料、マットレスのクッション材、紙おむつの基本材料であるポリマー分野でもCO2の利用が可能だ。マサチューセッツ州ウォルトハムのノボマー(Novomer)社がこれに目を付けた。現在、ポリマー業界では採掘量全体の7~8%の石油やガスを使用しており、環境に大きな負荷をかけている。

ノボマー社の技術で、化石燃料の使用量が半分に削減されるという。独自の触媒を使い、CO2または一酸化炭素中の炭素分子を一般的な化学原料と反応させる。CO2はプロピレンや酸化プロピレンなどの石油由来の原料の50%を代替する。同社は、ガス会社からCO2を買い取ることで、生産コストを現在の20分の1に削減できる見込みだという。

自動車、靴、家具、テキスタイル用の熱溶融性接着剤、住宅・ビル用硬質フォーム断熱材、そして金属、プラスチック、木材の加工・保護用コーティング材などを製造販売している。

 

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20141010001