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米国の財政赤字削減の標的、国際環境保護資金の公算(Reuters)

2011-09-12 13:06:27

海岸浸食防止用に置かれた砂袋の上を歩く少年(10年4月21日、インドネシア・南スラウェシ州)
【ワシントン7日ロイター時事】ネパールの洪水対策、ナミビアの野生生物保護、それにインドネシアのリーフフィッシング(サンゴ礁などのある内海の漁業)と米国の国家予算にはどのような関係があるのだろうか。

 実はこれらの海外の環境保護活動がすべて米国政府から資金援助を受けている。この資金は恐らく、財政赤字削減を目指す米議会の「スーパー委員会(特別委員会)」の主な標的になる。米国人があまりカネを使いたくないと考えている「海外援助」と「環境」の2分野にまたがっているからだ。

 財政赤字削減策を協議する議会超党派の特別委員会のメンバー12人は、10年間で少なくとも1兆2000億ドルの赤字を追加削減する案をまとめる。11月23日までに合意できなければ、自動的な支出削減が発動される。その場合、同委員会は海外の環境保護活動の援助資金に狙いを定める可能性がある。

 これは海外の環境保護活動を実施する非政府組織(NGO)にとって大きな懸念材料だ。NGOは海外環境保護支援が割安と考えている。環境がいったん破壊された場合の修復コストは保護資金をはるかに大きく上回るし、世界の不安定な地域にある天然資源が減少すれば米国の安全保障上の脅威になるからだ。

 NGOである「国連財団(UNF)」のリード・デッチョン副会長(エネルギー・気候変動担当)は「これらの環境保護投資が何を支えるのかを考えることが重要だ」と述べ、「鳥やウサギだけが対象ではない。生命全体を救う上で大きな影響をもたらす」と強調した。

 しかしアメリカン・エンタープライズ研究所の世論調査の専門家カーリン・ボーマン氏によると、ほとんどの米国人は米国の海外援助がどう実施されているか知らず、一般的に海外援助に対する関心も低いという。

 2010年の「ワールド・パブリック・オピニオン」世論調査によれば、大半のアンケート回答者が米国の予算に占める海外援助比率は25%程度で、あるべき比率とみなす10%の2倍以上と考えていることが判明した。

 しかし実際には米政府の海外援助の比率は予算全体のほぼ1%前後だ。昨年の国際保護、気候、環境プログラムに対する米国の支援額は11億3000万ドルで、予算全体の約0.03%にすぎない。

 ケイ・グレンジャー米下院議員(共和、テキサス州)は最近、下院歳出委員会で、海外活動に資金を融通する法案の作成で主要な問題は、個々のプログラムが米国の国家安全保障にどんな影響をもたらすかという点だと指摘。「この問題に答えられない場合、われわれは支出を削減し、制約を加え、あるいはプログラムそのものを撤回している」と述べている。

 これに対し世界100カ国で活動している世界自然保護基金(WWF)のトッド・シェルトン氏は「われわれは非常に懸念している」と述べた。

http://jp.reuters.com/article/jpnewEnv/idJPjiji2011090800251

海岸浸食防止用に置かれた砂袋の上を歩く少年(10年4月21日、インドネシア・南スラウェシ州)