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政府の温室効果ガス排出量目標 2030年で約25%削減へ 欧州水準に遠く及ばず(毎日)

2015-04-25 16:50:57

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ondankaimg_08cad51c53c693b052a71bf89878dbb776114政府は24日、2030年の温室効果ガス排出量を今より約25%減らす目標案と、総発電量に占める原発の割合を20〜22%とする案を了承した。

 

与党内協議を経て5月中に正式に決め、6月の主要7カ国首脳会議(G7サミット)で表明する。ただ、温室効果ガスの削減目標は、欧州連合(EU)など主要先進国・地域の水準を大きく下回っており、国際社会から高い評価を受けられそうにない。原発依存度をもっと下げるべきだとの声も根強く、最終決定までには曲折がありそうだ。

 

◇「森林効果」加え底上げ

目標値を巡って、経済産業省と環境省は水面下で激しい攻防を続けてきた。

 

高すぎると電力料金上昇など国民負担増につながるとして、経産省は当初、「10%台後半」の削減を提案した。これに対し、国際貢献の観点から意欲的な目標を求める環境省は、2050年までに80%削減する長期目標に照らして「05年比29%減」が必要と主張した。

 

4月下旬、「13年比20%減」との経産省案が一部で報じられると、複数の海外メディアが「日本の新目標は著しく低い」などと批判的に報道。「本当にそんな数字を出すのか?」。温暖化対策交渉に携わる官庁には、在京大使館から電話が相次いだ。「日本の外交的立場がもたない」。そんな空気が政府内に広がった。

 

削減目標は、年末にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で合意を目指す新たな国際枠組みの中核だ。京都議定書で排出削減義務のない中国やインドなどの新興国や途上国も参加する見通しで、それらの国の目標値を底上げするためにも、先進国が早期に高い目標を掲げる意義は大きい。

 

既にスイスが「30年までに1990年比50%減」、欧州連合(EU)が「同40%以上減」、米国が「25年までに05年比26〜28%減」の目標を国連に提出した。

 

「せめて米国並みに近づける必要がある」。経産省がひねり出したのが、原発や再生エネの発電比率を左右する電力や熱消費に伴う二酸化炭素(CO2)削減幅を21%程度にとどめる一方、森林のCO2吸収分と代替フロン類の削減分を上積みして「約25%減」とする案だ。

 

28日の日米首脳会談で安倍晋三首相が説明し、温暖化対策に熱心なオバマ大統領の了解を取り付けられれば、交渉を乗り切れるとの計算も働いた。

 

だが、約25%減は、京都議定書の基準年(90年)比で約17%減。明日香寿川・東北大教授(環境政策学)は「能力や責任に応じた目標ではないとしてやり玉に挙げられる」と懸念する。

 

◇原発比率「20〜22%」運転延長が前提

「再稼働差し止めの決定が続けば、原発依存度の見通しを再検討せざるを得ないところだった」。鹿児島地裁が、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の再稼働差し止めの申し立てを退けた22日、経済産業省幹部は安堵(あんど)の声を漏らした。

 

関西電力高浜原発3、4号機(福井県)に対しては14日、福井地裁が再稼働を認めない仮処分を決定。川内原発も差し止められると、長期にわたり原発ゼロが続き、政府が作成中の2030年の「電源構成」案への影響が出かねないからだ。

 

電源構成は、総発電量に占める火力や原子力、再生可能エネルギーなど各電源の割合。鹿児島地裁での「勝利」を受け、政府は30年の原発比率を20〜22%とする案を固めた。東京電力福島第1原発事故前の10年度の総発電量(自家発電分を含む)に占める割合(26.4%)より減らしており、経産省幹部は「着実に依存度を減らしていると言える水準」と強調する。

 

だが、「20%以上」の数字には、安倍政権の原発回帰の思惑が透けて見える。

 

原子炉等規制法は原発の運転期間を原則40年に制限している。全国の原発48基に40年ルールを厳格に適用すると、建設中の中国電力島根3号機(島根県)とJパワー(電源開発)大間原発(青森県)の運転を織り込んでも、30年の原発比率は約15%、35年には約8%に下がる。20%以上とするには、原子力規制委の認可を前提とする最長60年までの運転延長や、新増設が必要だ。

 

政府は、新増設の容認を見送りつつ、原発をできるだけ再稼働し、運転期間も延長させることでつじつまを合わせる考え。電源構成を検討する経産省の有識者委員会では、20%以上の依存度について「(昨年4月に閣議決定したエネルギー基本計画の方針の)『可能な限り引き下げ』たと言えるのか」=橘川武郎(きっかわ・たけお)東京理科大教授=などの批判が相次いだが、経産省は、電気料金の抑制や温室効果ガス削減を理由に押し切った。

 

政府は、与党内の議論を経て5月中に電源構成を正式に決める。焦点は、原発再稼働に批判的な世論の動きと、昨年の総選挙で「原発の40年制限を厳格適用する」と公約した公明党の対応。政府内では「国民や与党内の反発が強まれば、20%未満に修正される可能性もある」との見方も出ている。【中井正裕、安藤大介】

 

http://mainichi.jp/select/news/20150425k0000m040125000c.html