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グリーンランド氷床の溶融加速は本当か(?) NASAが200台強のロボット計器を投じて詳細調査に。本当だったら、大幅海面上昇不可避(RIEF)

2015-08-11 00:29:11

Greenlandキャプチャ

 地球温暖化が予想以上に加速化している懸念が深まる中、米NASA(米航空宇宙局)は、ロボット200台以上を動員して、グリーンランドの巨大氷河氷床の溶融度合いを調べるプロジェクトに着手する。

 

 調査はOceans Melting Greenland (OMG)で、6年計画で温暖化の進展がグリーンランドの氷河に及ぼす影響を調べる。気温上昇によるグリーンランドの陸上にある氷河の退潮はすでに確認されている。しかし、温暖化による海水温の上昇が沿岸部から、さらに海中にある氷河氷床に及ぼす影響はまだ十分には解明されていない。

 

 北極を覆っている氷は、オンザロックのアイスのようなものとされ、融けてもグラスから水が溢れることはない。これに対して、グリーンランドの氷は主に陸上にあり、融けると膨大な氷河の塊が海に流れ込む。つまり、オンザロックに新たに氷の塊が注ぎ込まれるようになり、グラスから水が溢れだすことになる。

 

 これまでの研究ではグリーンランドのすべての氷が解けると、世界の海面は6メートル上昇すると言われている。ただ、現在生じている氷河の溶融はさまざまな要素が組み合わさっているとみられ、OMGではそうしたメカニズムを解明することを目指すという。

 NASA無題

 今回のプログラムのポイントは、グリーンランド周辺の海温の調査や、氷河の詳細な調査、島自体の深さなどを詳細に調べるため、200以上の使い捨てのロボット機器を春に飛行機で調査地点に投入し、年間の計測データを集めるという。

 

 グリーンランドは地球最大の島で、大地のほとんどを氷で覆われている。表面のうち69万5000平方マイルは氷河で覆われ、英国の14倍の広さを持つ。しかし、この氷による大地のコーティングが温暖化の影響で危険な状態にまで消失しつつあるとされる。

 

 コロラド大学の気候科学者のKonrad Steffen教授の研究によると、2007年に焼失したグリーンランドの氷は、欧州アルプスに存在する氷の2倍だったと推計している。北極の氷が減少していることや、ツンドラ地帯の永久凍土が減少していることも、明確な事実として報告されている。

 

 ただ、最近になってわかったことは、地形の複雑さによる影響の大きさだ。グリーンランドでは、氷床の土台となっている陸上部が長いフィヨルド形状となっていることが知られている。ただ、そうしたフィヨルドの深さ、沿岸部とフィヨルド部の氷のつながり、亀裂の状態、氷床の体積等は十分な情報が得らえていない。

 

 フィヨルドの深さによって海中の氷の規模が異なってくるだけに、沿岸の精緻なデータが欠かせないという。この「フィヨルドの深さ」の解明が、今回のOMGでも最大の課題とされている。ばらまかれるロボット機器が、氷の中で着実にデータを拾ってくれるかどうか。宇宙だけではない、NASAの活躍に期待したい。

http://science.nasa.gov/missions/omg/