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化石燃料企業への投資を引き揚げる「Divestment」運動 世界の500強の組織が宣言。総保有資産額は420兆円。ただ日本勢はここでも姿無し(RIEF)

2015-12-03 22:21:36

Divestmentキャプチャ

   地球温暖化を加速する石炭や石油などの化石燃料関連産業への投資を引き揚げる「Divestment」宣言をする企業、金融機関、投資家等が世界中で500を超え、保有資産合計額は3兆4000億㌦(約420兆円)に達した。

 

 Divestment 運動を展開する環境NGOの「350.org」が2日、パリで公表した。9月21日に同団体が公表した時点では400団体で2兆6000億㌦だったから、二か月ほど(10週間)で一気に100機関が増えたことになる。

 

 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で、先進国と途上国が産業革命前からの世界の気温上昇を2℃未満に抑える国際合意で一致する公算が高まっているから、化石燃料産業への投融資を見直す動きが急速に広がっているといえる。

 

 ただ、3兆4000億㌦の資産規模は、賛同した組織の保有資産額なので、実際のDivestment対象の化石燃料産業向け投資資金の引き揚げ額はこれよりも少ない。しかし、仮に総資産の5%とすると1700億㌦(約20兆円)となる。

 

 すでにエネルギー産業や、化石燃料を大量に消費する産業の株価は低迷を続けている。3日、経営統合を発表したわが国の石油元売りトップのJXホールディングスと3位の東燃ゼネラル石油のケースも、「国内需要の構造的な減少」が統合の引き金の一つだ。COP21の合意が法的拘束力を伴うと、早晩、化石燃料へのCO2排出規制が各国で導入されることが予想される。

 

 Divestment宣言をする企業や投資家等の増加は、こうしたエネルギー市場の先行きの転換を想定して投資ポートフォリオの見直しに取り組もうとする流れが広がっていることを示している。

divestment2キャプチャ

 350.orgは、最近のDivestment宣言の主な事例を公表している。たとえば、フランス議会は、公的投資機関や企業、地方自治体などに化石燃料に投資しないよう奨励する動議を採択した。パリやリオンなど20の自治体も委託先のCaisse des Dépôts にDivestを進める要請動議を可決した。

 

 他の都市もDivestment宣言で追随している。ノルウェーのオスロ、ストックホルム、アムステルダム、ベルリン、ロンドン、メルボルンなど。また世界最大の保険会社であるドイツのアリアンツは、収入の3割以上を石炭に依拠する企業銘柄への投資を引き揚げ、風力発電への投資を増やす宣言をした。

 

 教会や大学も「脱石炭」の旗印を掲げている。ドイツのヘッセとナッソーのプロテスタント教会は合計18億ユーロの教会資産の投資対象から石炭だけでなく化石燃料関連投資をすべて引き揚げる方針を打ち出した。

 

 大学では、英London School of Economicsやシェフィールド大学、米国のスタンフォード大学などが宣言、MITやハーバード大学などでも学生から大学資産のDivestment要求が出ている。http://rief-jp.org/ct8/56381

 

 英国でも、約50の自治体でキャンペーンが展開され、ケンブリッジやノーウィッチなどの議会で、Divestmentを支援する動議が採択され、自治体の年金基金の運用見直しに着手しているという。

 

 米欧を中心に広がるDivestmentの渦だが、ここでも「日本」は存在感がほとんどない。金融機関だけでなく、大学や自治体なども報道ニュースとしてDivesment運動を認識しても、自らの行動として考えるところにまでは至らないようだ。NGOの活動もあまり見えない。

 

 それどころか、国内では電力小売自由化を目指して石炭火力発電所の大増設に向かっており、海外でも途上国向けに石炭火力発電所の輸出ドライブをかけようとしている。Divestment運動の矛先が「化石燃料漬け」の日本への非難に転じる可能性もある。

 

http://gofossilfree.org/in-the-space-of-just-10-weeks/