HOME |人類由来の気候変動、コロンブスの米大陸発見後にも発生。欧州人の米植民で起きた先住民大量死の結果、農地が再自然林化、地球のCO2濃度が減少「小氷期」に。英研究チームが指摘(RIEF) |

人類由来の気候変動、コロンブスの米大陸発見後にも発生。欧州人の米植民で起きた先住民大量死の結果、農地が再自然林化、地球のCO2濃度が減少「小氷期」に。英研究チームが指摘(RIEF)

2019-02-02 21:29:29

Themes2キャプチャ

 

  人類の行動による気候変動が、産業革命前にも生じていたとする研究成果が公表された。コロンブスがアメリカ大陸を発見した後の南北大陸で、植民した欧州人が持ち込んだ天然痘などへの罹患や虐殺等によって先住民が大量に死亡。その結果、フランスと同規模の農地が耕作されず自然林に戻り、CO2吸収力が増加、世界の平均気温が0.15%下がったという。温暖化の逆の寒冷化が進み、中世期の「小氷期」の一因になったとみられる。

 

 (上の図は、西南極の氷から分析したA)CO2濃度の推移と、B)炭素同位体比の推移。黄色いゾーンは南北アメリカでの先住民大量死亡期)

 

 研究は、英University College London(UCL)のAlexander Koch氏、 Chris Brierley氏、 Mark Maslin氏、Simon Lewis氏の研究チーム。論文は「Science Direct」に掲載された。

 

 1492年のコロンブスによる米大陸発見後、欧州からの植民者たちは、1600年までに伝染病や虐殺等で死亡した先住民は5600万人と推計される。

 

伝染病等で大量死が起きた各地
伝染病等で大量死が起きた各地

 

 この人口大量減少によって、それまで耕作されていた農地を耕す人が消えた。その結果、5580万haの農地は耕作放棄され、自然林(二次遷移)に戻っていった。その広さはフランス全土と同規模。膨大な新規自然林はCO2の追加「吸収源」として、1500年代後半から1600年代初めにかけて、大気中のCO2濃度の低下を引き起こした。CO2濃度は年7~10ppmの減少を引き起こしたという。

 

 現在、化石燃料の使用等による人類起源のCO2濃度増加量は年3ppmとされる。当時は、その倍以上のCO急減が起きたことになる。研究チームは、大気中のCO2量減少によって当時の地球表面の平均気温は0.15℃下がったと推計した。こうした「吸収源の効果」は2世紀にわたって影響したとみている。

 

 研究チームは、コロンブスが大陸に到着する前の米先住民族の人口を平均6050万人、人口一人当たり1.04haの耕作地、人口減少を約90%、二次遷移でCO2吸収力を高めた面積は5580万haの条件を想定している。

 

ロンドンのテムズ川も冬は凍っていた
ロンドンのテムズ川も冬は凍っていた

 

  小氷期(Little Ice Age, LIA)は、ほぼ14世紀中から19世紀半ばまで続いた寒冷な期間をいう。小氷河時代、ミニ氷河期ともされる。欧州では英国ロンドンのテムズ川が凍り付き、南欧のポルトガルでも雪が毎年降り、欧州各地で耕作不良から飢饉が発生した。ただ、小氷期が全球的な自然現象だったかどうかについては、これまでも疑問の声も出ていた。

 

 今回の研究で、米大陸発見という人類の行動がきっかけで、小氷期が出現したとすると、その後の、産業革命期以降の人類の行動による温暖化現象の蓄積へと、14世紀以来、人類の行動は、地球のCO2濃度の増減の主因になってきたことになる。

 

 また温暖化対策で各地で進められている植林、再植林等による緑化・吸収源増大政策も、大規模・長期に展開すると、効果をあげることが、歴史から学べる。逆に温暖化悪化が人類の大量死につながらないよう、自らの行動を制御する知恵と勇気も求められる。

 

 

 

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0277379118307261