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ウォーターフットプリント: 水の使用量で製品評価 企業の競争力も左右 (日経産業) 東芝、コカコーラ、ユニリーバ等が取り組み
2012-10-25 22:39:22
日経エコロジー 相馬 隆宏: 東芝は9月、家電製品の「ウオーターフットプリント」を業界に先駆けて公表した。原材料の調達から生産、流通、使用、廃棄・リサイクル(再利用)まで製品のライフサイクル全体で使用する水の量を推計して表したものである。
東京都市大学と共同で昨年発売した洗濯乾燥機のウオーターフットプリントを算出したところ、2000年の製品と比べて58%少なかった。衣類の量や素材に応じて洗いやすすぎ時の水量を変える機能を搭載するなど、節水性能を高めたことによる効果だ。
環境推進部製品環境推進担当の小林由典主務は「環境影響の評価項目に水を入れる動きがあり、早めに手を打たなければいけないと考えた」と狙いを話す。
ISO(国際標準化機構)がウオーターフットプリントの規格化に着手するなど、水への関心は高まる一方である。東京都市大学環境情報学部の伊坪徳宏准教授は「欧州でウオーターフットプリントの表示を義務付けようとする動きがある」と言う。政府や自治体などが水使用量の少ない製品を優先して購入するようになれば、対応の遅れた企業は市場シェアを失いかねない。
こうした動きの背景にあるのは、人口の増加や新興国の経済成長、気候変動などの影響によって水不足の懸念が増していること。25年までに、世界の約28億人が水不足や安定的に水を利用できない「水ストレス」に直面するとの予測もある。
中国やインド、南アフリカなど水不足が懸念される国・地域は、多くの企業が生産や販売の重要拠点に位置付けている。
NPOである日本水フォーラムの竹村公太郎事務局長は「企業の持続可能な成長を考えると、水の問題を押さえておかないと大変なことになるだろう」と警鐘を鳴らす。
米コカ・コーラグループは、20年までに製品の製造に使う量と同等の水を自然に還元し、実質的な水使用量をゼロにする「ウオーター・ニュートラリティー」を世界共通の目標に掲げた。自然との間で水の“貸し借りのない”関係を構築し、成長を持続させる。
国内では日本コカ・コーラが全国のボトラー(瓶詰め会社)12社と共同で、水源の保護や製造時の使用量削減に取り組んでいる。例えば、容器や設備の洗浄・殺菌などに使った水をフィルターでろ過した後に、床の洗浄などに再使用する。北海道の工場ではペットボトルの殺菌工程で薬剤を使わない方式を採用し、ボトルの洗浄に使う水を半減させた。
水の使用が環境に与える負荷は、大気に放出する二酸化炭素(CO2)と異なり、場所や時期などによって大きく変わる。雨水や河川、地下水などどこから取水するか水源への配慮も重要になる。
英蘭ユニリーバは中国やインドなど水不足が深刻と判断した7カ国で、水使用量を削減する。原料の農産物を栽培するところから、製品の製造、使用までが対象だ。製品の使用時の削減では、すすぎの回数が少なくて済む衣料用洗剤を開発すると同時に、消費者に従来より少量の水ですすぐように洗濯方法を変えてもらう啓発活動を展開している。
代替するものがない水の重要性が叫ばれ、その使用量が少ない企業を評価する動きもある中、環境経営に「水」の視点を入れることが今後の競争力につながりそうだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD160M9_Y2A011C1X21000/
東京都市大学と共同で昨年発売した洗濯乾燥機のウオーターフットプリントを算出したところ、2000年の製品と比べて58%少なかった。衣類の量や素材に応じて洗いやすすぎ時の水量を変える機能を搭載するなど、節水性能を高めたことによる効果だ。
環境推進部製品環境推進担当の小林由典主務は「環境影響の評価項目に水を入れる動きがあり、早めに手を打たなければいけないと考えた」と狙いを話す。
ISO(国際標準化機構)がウオーターフットプリントの規格化に着手するなど、水への関心は高まる一方である。東京都市大学環境情報学部の伊坪徳宏准教授は「欧州でウオーターフットプリントの表示を義務付けようとする動きがある」と言う。政府や自治体などが水使用量の少ない製品を優先して購入するようになれば、対応の遅れた企業は市場シェアを失いかねない。
こうした動きの背景にあるのは、人口の増加や新興国の経済成長、気候変動などの影響によって水不足の懸念が増していること。25年までに、世界の約28億人が水不足や安定的に水を利用できない「水ストレス」に直面するとの予測もある。
中国やインド、南アフリカなど水不足が懸念される国・地域は、多くの企業が生産や販売の重要拠点に位置付けている。
NPOである日本水フォーラムの竹村公太郎事務局長は「企業の持続可能な成長を考えると、水の問題を押さえておかないと大変なことになるだろう」と警鐘を鳴らす。
米コカ・コーラグループは、20年までに製品の製造に使う量と同等の水を自然に還元し、実質的な水使用量をゼロにする「ウオーター・ニュートラリティー」を世界共通の目標に掲げた。自然との間で水の“貸し借りのない”関係を構築し、成長を持続させる。
国内では日本コカ・コーラが全国のボトラー(瓶詰め会社)12社と共同で、水源の保護や製造時の使用量削減に取り組んでいる。例えば、容器や設備の洗浄・殺菌などに使った水をフィルターでろ過した後に、床の洗浄などに再使用する。北海道の工場ではペットボトルの殺菌工程で薬剤を使わない方式を採用し、ボトルの洗浄に使う水を半減させた。
水の使用が環境に与える負荷は、大気に放出する二酸化炭素(CO2)と異なり、場所や時期などによって大きく変わる。雨水や河川、地下水などどこから取水するか水源への配慮も重要になる。
英蘭ユニリーバは中国やインドなど水不足が深刻と判断した7カ国で、水使用量を削減する。原料の農産物を栽培するところから、製品の製造、使用までが対象だ。製品の使用時の削減では、すすぎの回数が少なくて済む衣料用洗剤を開発すると同時に、消費者に従来より少量の水ですすぐように洗濯方法を変えてもらう啓発活動を展開している。
代替するものがない水の重要性が叫ばれ、その使用量が少ない企業を評価する動きもある中、環境経営に「水」の視点を入れることが今後の競争力につながりそうだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD160M9_Y2A011C1X21000/