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英国流のStreetBank活動: 近所づきあいとシェアリング経済(むささびジャーナル)

2012-11-18 12:14:13

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New Statesmanのサイトを見ていたら英国で行われているStreetbankという、インターネットを使ったモノの貸し借り運動のことが出ていました。ちょっと変わっていると思うのは、インターネットを使っているにもかかわらず活動範囲が自分の住んでいるところから1マイル四方に限られるということで、一種のコミュニティ活動のことだった。

Streetbankのサイトには、


  • Streetbankは近所の人たちとモノをシェア(共有)したり、隣人からモノを借りたりするお手伝いをするウェブサイトです。
    Streetbank is a site that helps you share and borrow things from your neighbours.


と書いてある。

Streetbankのサービスを使うためにはまずは会員(無料)になるための申し込みをしなければならないのですが、その際に自分が持っていて他人に貸したり、場合によってはあげてしまったりすることができるものを一つ以上登録する。穴あけドリルでもいいし、使わなくなったベビー用品、買ったのはいいけれど一度も使ったことがない玩具等々。モノだけではない。自分が持っていて誰かのために使う気のある特殊技能(外国語ができるとか)でもいい。

それをStreetbankのサイトに登録するのですが、その際、自分の郵便番号(postcode)も同時に登録する。すると自分の近所に住んでいる人が何を提供する気があるのかが分かる。芝刈り機かもしれないし、古自転車かもしれない。あるいはものではなくて「編み物教えます」というサービスかもしれない。要するに何でもあり。原則として半径1マイル(1.6キロ)の範囲内の会員同士が交換する。それだけ?それだけのようです。

創設者のSam Stephensという人が目指しているのは、住みやすいコミュニティを作ることのようで、そのためにキーとなるのがモノの貸し借りであるということです。つまりStreetbankはモノの貸し借りを促進するけれど、究極の目的はご近所同士の触れ合いの機会の提供なのですよね。

10月22日付のHuffington Postによると、Streetbankの会員は現在のところ約1万人だそうですが、発想が面白いと(むささびが)思うのは、インターネットという無機質・無記名な手段を通じて具体的な人間同士の顔が見える接触を促進しようという点です。

ただNew StatesmanのエッセイはStreetbankの活動を世界的な広がりを見せる「シェアする経済」(sharing economy)という活動の一つとして紹介しています。この経済活動については「現代ビジネス」というサイトが

  • 欧米を中心に拡がりつつある新しい概念で、ソーシャルメディアの発達により可能になったモノ、お金、サービス等の交換・共有により成り立つ経済のしくみのことを指します。


と説明しています。

いまから12年前の2000年、世界中の消費支出(普通の家庭レベルで使われたお金)の総額は20兆ドル超えた。これはその40年前(1960年)に比べると4倍の増加であったのですが、そのころは「消費」は経済を刺激するという意味で「美徳」とされていた。最近ではそのような消費活動が生む無駄や行き過ぎた消費熱に応えようとする産業活動がもたらす環境破壊に目が向けられるようになっている。これまでの「好きなものを好きな時に好きなだけ」手に入れるという消費ではなく、消費者が持っているものを交換したり、共有しようとする動きが広がっているということです。

Streetbankもそのような思想に基づいている活動で、他にもいろいろあるのだそうですね。自宅を無理なくプチホテルとして使おうという人々のAirbnbのサイトには192カ国、3万都市で自宅をホテルがわりに提供する人たちがリストアップされているし、「車を貸したいオーナーと、借りたいドライバーとの出会いをウェブサイトで仲介する」(日経ビジネス)whipcarというのもある。

 

http://www.musasabijournal.justhpbs.jp/backnumbers-254.html#no1