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福島県内 なえる求職 遠のく自立 賠償金、勤労意欲に影(河北新報)

2012-11-27 09:49:17

相双公共職業安定所富岡出張所の事務を一部受け持つ平公共職業安定所。求職は原発事故前より減っている=いわき市
福島第1原発事故で避難区域に一時指定された福島県の市町村で、企業が求人を出しても応募が伸び悩むケースが増えている。原発事故に伴う東京電力からの賠償金で住民の就労意欲が下がったとの指摘もあり、自治体関係者は「働く意欲がなえれば、自立が遠のく」と危機感を募らせている。

 精密機器メーカーの「菊池製作所」(東京)は福島県川内村で30日に工場の操業を始めるのに先立ち、村民ら50人の新規従業員を募ったが、応募者は31人にとどまった。

相双公共職業安定所富岡出張所の事務を一部受け持つ平公共職業安定所。求職は原発事故前より減っている=いわき市


 
 村は一部を除いて避難区域指定が解け、村民に帰村を呼び掛けている。工場進出で雇用が確保され、帰還を促すと期待されたが、不調に終わった。同社は今後も募集を続けるが、「当面は30人規模で操業せざるを得ない」という。
 旧避難区域の広野町にある「日本純薬」(東京)広野工場も求人に対する応募の動きが鈍い。原発事故前は2、3人の求人を出すと1週間で7、8人の応募があったが、事故後は定員を下回ることがある。
 相双公共職業安定所富岡出張所は避難区域の集中する双葉郡8町村を管轄する。9月は管内の求人214人に対し、採用が決まったのは37人。求人充足率は17.3%で、原発事故前の昨年2月(31.4%)の半分近くに落ち込んだ。

 応募の低迷は住民が遠方で避難生活を続け、働き手の少ないことが主な原因だが、「避難区域の住民に賠償金が支払われ、労働意欲が減退していることも一因」という声が根強い。
 川内村の住民は「これまでは朝から晩まで働いてやっと生活できていたが、今は何もしなくてもお金が入ってくる。働くのがバカバカしくなる人が出ても不思議ではない」と話す。

 避難区域の自治体の幹部は「賠償金を得て勤労意欲が薄れた住民も見受けられる。依存心が高まり、結果的に復興が遠のく可能性がある」と心配している。

 

http://www.kahoku.co.jp/news/2012/11/20121127t63007.htm