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2005年のJR西日本尼崎脱線事故の裁判始まる。 元会長の井手被告 事故を起こしたカーブの危険性に「気づく方が無理」 と居直る(FGW)

2012-11-30 15:27:54

JR福知山線脱線事故の公判で、被告人質問が行われた神戸地裁の第101号法廷=神戸市中央区で2012年11月30日
JR福知山線脱線事故の公判で、被告人質問が行われた神戸地裁の第101号法廷=神戸市中央区で2012年11月30日


各紙の報道によると、2005年4月に乗客106人の死亡者を出したJR福知山線脱線事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴された元JR西日本会長の井手正敬被告(77)ら歴代3社長の被告人質問が30日、神戸地裁(宮崎英一裁判長)で始まった。井手被告は、現場カーブでの事故の危険性の認識について「気づく方が無理」「担当者が把握すればいいこと」と、危険性の認識を否定した。

 

 起訴されているのは、井手被告(社長在任92〜97年)のほか、南谷昌二郎(71)被告(同97〜03年)、垣内剛)(68)被告(同03〜06年)の3人。このうち、井手被告は、福知山線が大阪方面に向かう東西線に接続するために尼崎駅直前で急カーブの設計に変更した1996年当時の社長で、事故当時は相談役だった。

井手被告は、急カーブに変更したことによる事故の危険性の認識について問われr、「(カーブでの事故は)想定していなかった」と改めて危険性の認識を否定した。さらに、「担当部署に完全に任せており、信頼していた」「(経営者は)危険性を把握する義務はなかった」などと語った。

 当時の取締役会で現場カーブの図面が示された際に「危険性に気づくべきだったと言われているが」と尋ねられると、「(そう)聞く方もおかしいと思う」と強調。「カーブの事故例を聞いたことは」との問いには、「担当者が把握すればいいことで、経営者が把握することではございません」と明確に語った。

しかし、鉄道事業を主業務として営む企業のトップとして、事業に伴う安全性の確保を認識するのは、基本中の基本ではないか。鉄道会社のガバナンスは、利益を追求するだけではなく、乗客を安全、快適に運び、そのうえで適正な利益を上げるというバランスに配慮する点にあるはずだ。井手被告の発言は“居直り”とも聞こえ、到底、人命を運ぶ鉄道事業の経営責任者の発言としては、お粗末としかいいようがない。

事故の刑事責任については、兵庫県警が、死亡した運転士(当時23歳)ら計10人を書類送検し、経営陣では、山崎正夫元社長(69)のみが業務上過失致死傷罪で起訴された。しかし、今年1月に無罪が確定している。歴代3社長の責任については、神戸地検が遺族の告訴により捜査したが、2度にわたり容疑不十分で不起訴とした後、市民で構成する神戸第1検察審査会が10年3月に起訴議決をして強制起訴され、今回の裁判が開かれた。起訴内容は山崎元社長とほぼ同じで、3被告はそろって否認している。