HOME |福島の若者の甲状腺がんの疑いで、環境省が長崎で対照調査。長崎以外では放射能の影響を否定できないということ(?)(FGW) |

福島の若者の甲状腺がんの疑いで、環境省が長崎で対照調査。長崎以外では放射能の影響を否定できないということ(?)(FGW)

2012-12-05 13:00:45

福島での県民健康調査結果を発表する調査団
福島での県民健康調査結果を発表する調査団


環境省は、東京電力福島第一原子力発電所事故後の福島県内の18歳以下を対象とした県民健康管理調査で、約4割の受診者に結節や義胞などの甲状腺変化の疑いのある症状が表れたことから、、対照群として事故地から離れて放射能汚染の影響を受けていないとみられる長崎県で、同年齢層の若者の甲状腺エコー検査を始めた。ただ、、長崎が選ばれたのは、沖縄を除き日本列島の一番西にあるため、被爆リスクが最も小さいとの判断によるとみられる。そのことは、逆に長崎以外の都道府県では、「影響が皆無といえない」ことになる。議論を呼びそうだ。

福島県での調査では、検査結果が確定した約5万8000人について、40%強の2万4000人ほどに、5.0mm以下の結節あるいは20.0mm以下の嚢胞が認められた。また、314人(0.5%)に二次検査の対象となるそれ以上の結節、嚢胞が認められ、うち1人は「直ちに二次検査が必要」と判定された。前年度の調査でも甲状腺がんと判定された人が1人出た。ただ、放射線被爆で甲状腺癌を発症するまでには、通常、被曝から少なくとも4~5年はかかるとされていることから、調査にあたった医師団は原発が甲状腺異常増加の原因である可能性は低いとしている。

しかし、福島県民の間に不安感が強いことから、環境省は対照地域での調査を実施することにした。対象地の長崎県では、県内の18歳以下、約1500人を選んで甲状腺エコー検査を実施、来年3月までに結果を公表する予定だ。調査は日本乳腺甲状腺超音波医学会に委託され、長崎県の調査は長崎大が担当する。

ここで疑問が出ているのが、なぜ長崎県を選んだのかという点だ。日本列島を覆った放射能汚染の人体への影響が少ない地域を選んだというのが選択指針であることは間違いない。ただ、関西圏や中国、四国地方では影響がないとは言えず、地理的に日本列島の西端の長崎を選ばざるを得なかったということかもしれない。つまり環境省は、他の都道府県では放射能の影響を受けている可能性があり、長崎まで行かないと、対照調査をしづらいと考えたのではないか。

実は、環境省は長崎以外に、青森、山梨の2県も追加の対照地として想定しているという。ここでもなぜ、青森、山梨なのかという疑問が出てくる。福島の周辺の宮城や群馬、栃木などでは、おそらく程度の差はあるが放射能の影響があることはまず間違いない。東京や千葉でもホットスポットが随所にできた。しかし、青森、山梨の場合は、影響を受けたと思われる自治体(福島周辺)と、受けていないと思われる自治体(長崎)のちょうど中間的な位置にあり、長崎とは別の意味での対照地として候補にあがっているようだ。つまり「中くらいの影響地」という感じかもしれない。

もちろん検査の結果、各県の検査結果に有意の差がでないと、福島の調査も取り越し苦労だったということになる。しかし、福島、青森・山梨、長崎の検査結果が明確に3つのレベルに分類されるようだと、長崎以外の自治体についても、潜在的な健康被害が広まっていることを間接的に立証する形になる可能性がある。調査に恣意性や、数字の操作が起きないよう、対象となる県の人たちは、しっかり監視する必要があるようだ。
関連記事:http://financegreenwatch.org/jp/?p=22044