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火星で有機化合物検出も、由来は不明 (National Geographic) 火星人が捨てたものに決まっているのに・・

2012-12-05 13:17:16

探査船キュリオシティがすくいあげた火星の土


探査船キュリオシティがすくいあげた火星の土


NASAの火星探査車キュリオシティが、炭素が主体の単純な有機化合物を火星で検出した。ただし、これが地球からの汚染によるものなのか、火星にもともとある元素だけで構成されたものなのかは、まだはっきりとしていない。サンフランシスコで開催中のアメリカ地球物理学連合の年次会合で発表を行ったミッション責任者たちは、以前に火星の極地で確認された過塩素酸塩化合物が、キュリオシティの探査現場であるゲイル・クレーターにもあるようだと語った。
有機物、すなわち水素と結びついた炭素系の化合物である炭化水素を発見したという可能性は、より複雑な有機物質を探しているキュリオシティのミッションに大きな影響があるのではないだろうか。

火星にいま生命が存在している、あるいはかつて存在したということには、必ずしもならないだろう。しかし、これまでの生物学では利用可能な炭素があることがとても重要だと考えられているのだから、いまより水があり温暖だった遠い昔の火星に生命がいた可能性はいくらか高くなる。
火星のキュリオシティが「大発見」という憶測に沸いてから数週間して、今回の発表だった。しかし、プロジェクトに参加している科学者のジョン・グロツィンガー(John Grotzinger)氏は、火星の有機物が間違いなく見つかったのか、それとも地球からの汚染で生じたものなのかは、今でもまだわからないと説明した。

「このデータが最初に届いたあと、2つ目のサンプルで確認がされたときには、確かに興奮の声が上がった」とグロツィンガー氏は言う。「その興奮がおそらくは誤解された。われわれは科学のペースで科学を行っているのだが、ニュースはそれとは別のスピードで伝わる」。

 

◆過去にも火星で有機物が検出

見つかった有機化合物は、炭素、水素、塩素が組み合わさっており、1970年代中ごろにバイキング計画の着陸船で検出された有機塩素化合物と同じか、似たものである。
当時、これは地球からの汚染物質だと見なされたが、現在は、火星における化合物の生成について当時よりもわかっている。化合物で見つかった炭素の起源が火星なのか地球なのかというのが残された大きな問題だ。

 

今回単純な有機物を検出した火星サンプル分析装置(SAM)の調査責任者であるポール・マハフィ(Paul Mahaffy)氏は、「決定的」な結果ではないが重要なものであり、さらなる大規模な調査が必要だと語った。
またマハフィ氏は、問題の土のサンプルが有機物調査の第一目的ではなかったことから、発見は驚きだったと話した。実は、探査車の移動実験室と土壌運搬システムの掃除が目的で土をすくったのだ。

現場のロックネストは、岩の集まりが波状の砂に囲まれた場所であり、特に発見が期待される環境とは考えられていなかった。キュリオシティのチームは、ゲイル・クレーターにあるシャープ山のふもとに存在がわかっている粘土と硫酸塩鉱物のほうが、有機物が見つかる可能性はずっと高いとかねて考えている。キュリオシティは2013年早々にそこに向かう。

キュリオシティはロックネストにきて5カ月で、砂と土をこれまで5回すくっている。キュリオシティはロックネストで、事実上すべての機器を初めて使用したが、どの機器も順調に動くことが証明されたとグロツィンガー氏は説明した。

加えて、機器は協調して機能することができた。ひとつの機器が、土の鉱物がすべて結晶質ではないという驚くべき信号を発すると、それを受けて、何らかの有機物が含まれていないか確かめるべく、非晶質の部分の集中的な検査が行われたのだ。

◆チームは「とても自信をもっている」

SAMが検出したシンプルな有機物はクロロメタンの仲間だった。クロロメタンの仲間には、電子機器の洗浄で使われることのある化合物などがある。バイキング計画では、火星に持ち込まれた汚染物質かもしれないという話に説得力があり、その結論が広く受け入れられた。

しかし2010年、NASAエイムズ研究センターのクリス・マッケイ(Chris McKay)氏とメキシコ国立自治大学のラファエル・ナバロ・ゴンザレス(Rafael Navarro-Gonzalez)氏が、過塩素酸塩の化合物があるなかでほかの有機物質を熱するとジクロロメタンが発生する可能性があることを説明する有力な論文を発表した。

SAMチームの科学者であるマッケイ氏は、「SAMの結果については、(現時点で)重要な結論が2つある」と語った。

「ひとつは、“過塩素酸塩説”を確認中だということ。過塩素酸塩である可能性が高く、それが高温で有機物質と反応して、ジクロロメタンなどのシンプルな有機物を形成していると思われる」。

「もうひとつは、近くに過塩素酸塩がない環境で有機物を見つけるか、あるいは有機物の特定を阻む過塩素酸塩の壁を回避する方法を見つける必要があるということだ」。

同じくSAMの研究者であるゴダード宇宙飛行センターのダニー・グラビン(Danny Glavin)氏は、報道されている炭化水素の検出について、チームは「とても自信をもっている」と語った。

「われわれはここで起きていることをが解き明かそうとしている」とグラビン氏は言う。「われわれには道具があり、人がいる。そして最終的な結論が何であれ、数カ月先に活用できる火星に関する重要な事実を学んでいるところだ」。

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20121204003&expand#title