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改正電気事業法が成立、「発送電分離」による競争促進、電力小売り自由化へ一歩 完全自由化には課題(FGW)

2013-11-13 18:46:57

TEPCO20130201a
denryoku20131113_s1参院本会議は13日午前、気事業法の改正法案を、自民・公明・民主などの賛成多数で可決、成立した。今回の法案は、2015年をめどに電力需給を全国規模で調整する広域系統運用機関(仮称)の設立が柱。法改正で、地域ごとに、ひとつの電力会社が独占的に事業を行う現在の体制にピリオドを打ち、発電会社と送電会社を別々にする「発送電分離」型の電力市場形成に向かう。

 

電力システム改革は、今回の改正を第1ステップとし、第2ステップは2016年を目途とした電気の小売業への参入全面自由化、第3ステップで2018年から2020年までを目途に法的分離による送配電部門の中立性の一層の確保、電気の小売料金の全面自由化を予定している。TEPCO20130201a

 

電力自由化の時代が始まる。第2、第3ステップの実施に際しては、2015年度、2016年度の通常国会にそれぞれ改正法案を提出する予定。ただ、小売業への参入と、送配電網への接続問題は密接に絡んでおり、送配電網を抱える既存の電力会社に対して公平な接続義務を科すことができるかと言う点が最大の鍵となる。現行の経済産業省主導の改革案では、既存電力会社からの送配電網の分離は、法的分離にとどまっており、既存電力会社の送配電網支配を防げないとの懸念がある。

 

電力システム改革案は、今年4月に閣議決定した「電力システムに関する改革方針」に基づいている。同方針は、電力システム改革の目的として、(1)安定供給の確保、(2)電気料金の最大限の抑制、(3)需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大を掲げている。この方針に沿って、①広域系統運用の拡大、②小売及び発電の全面自由化、③法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保、という3本柱を改革の柱に据えている。

 だが改革のウエイトは、最初に「安定供給」を掲げていることでも明らかなように、既存の電力会社の供給体制を踏まえたうえでの改革にとどめようとしている点にある。焦点となった発送電分離で、欧米の電力市場のように完全分離型の「所有権分離」ではなく、持ち株会社を共有できる「法的分離」にとどめた点は、そうした従来型の体制を志向していることを物語る。

 電力市場に広範囲に競争原理を導入し、電気料金の引き下げ、電力関係の新規事業の多様化・拡大を進めるには、発送電会社と発電会社を完全分離し、市場競争が働く仕組みが不可欠である。本来ならば、この電力改革が、構造改革を進めるアベノミクスの「第三の矢」になる期待もあった。だが、経済産業省の既存利権温存の戦略によって、矮小化されたといえる。電力に代わる「第三の矢」は他に見当たらない。

ただ、今回から始まる一連の改革法によって、新規に電力事業に参入する内外の資本が増えると、経産省が描いた中途半端な自由化の流れをさらに改革すべきとする市場の要求が高まり、第二ステップ、第三ステップでの改革が修正される期待と可能性は、まだ残っている。再生可能エネルギー発電で電力事業に参入したソフトバンクをはじめとする他産業からの参入組や、商社、また余剰設備や敷地を保有する製造業、さらには外資企業などの動きが、日本の電力市場改革の成否を握っているともいえる。

http://www.meti.go.jp/press/2013/10/20131015002/20131015002.html