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経済同友会、CO2排出量の「見える化」促進で「カーボンフットプリント制度」整備を提言。企業向け温暖化税の代わりに、消費者課税の「炭素消費税」を要求(RIEF)

2018-01-22 07:11:17

doyuuka4キャプチャ

 

 経済同友会は、温室効果ガスの排出削減に向けた提言を発表した。企業活動で排出される二酸化炭素(CO2)量を”見える化”する「カーボンフットプリント」制度を、事業活動のインフラとして整備することを要請。温暖化対策での企業への温暖化課税には強い反対を表明、代わりに消費者に費用負担を求める「炭 素消費税(Carbon Consumption Tax:CCT)」を提案した。

 

 同友会は今回の提言で、「2050 年の排出削減目標を見据えると、過去の延長線上の対策では達成は困難 で、革新的なイノベーションを推し進める必要がある」としている。

 

 提言では、温室効果ガスの排出削減策を、政府、企業、家計の各部門が主体的に取り組むうえで、現状の認識、目標設定、成果の評価等を行うための出発点はCO2 排出量の定量的な把握にある、として、カーボンフットプリント制度の活用を強調した。

 

 同制度は、ライフサイクル全体の温室効果ガス排出量を把握するもので、通常、製品(サービス)レベルでの把握と、各企業レベルでの把握に分かれる。そこで同友会は、各企業に対して、まず、製品・サービスレベルで の 排出量把握で同制度の活用を求めた。

 

カーボン・フットプリントの構成
カーボン・フットプリントの構成

 

 製品・サービスレベルでのCO2 排出量の“見える化”が進むと、消費者が同製品・サービスの購買時にカーボン排出量も考慮した「賢い選択」を促せるとの期待を示している。企業には同制度を、組織レベルでのCO2排出量把握にも使うよう求めている。

 

  同友会提言によるフットプリント活用策は、金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が昨年夏に公表したカーボン情報開示の報告書とも連動する。情報開示によって、地球環境の持続可能性向上への企業の取り組みを、環境意識の高い消費者 や投資家が評価し易くなる、と位置付けている。企業のグローバル・サプライチェーンにも適用すれば、新たな付加価値の創出につながる、と評価している。

 

 ただ、情報開示は手段であって、目的ではない。目標達成のためには温暖化対策が必要となる。しかし、この点では同友会は「日本の炭素価格は他国に比較して高い水準にある」として、現行の地球温暖化対策税を含めてエネルギー課税を縮小・廃止の方 向で見直し、企業の負担軽減によって、投資を促す、と求めている。

 

 温暖化対策の施策として、カーボンプライシング制度が現在、議論されている。これには、同友会は「排出企業に直接課税(いわゆる上流課税) するような制度設計であるならば、わが国の企業競争力の維持・向上に逆行し、 経済成長を大きく阻害するから、その導入には明確に反対する」との立場を強調した。

 

カーボン・プライシングの流れ
         カーボン・プライシングの流れ

 

 一方で、「排出削減策を実施すれば費用の発生は免れず、誰かが負担し なければならない」のも事実。そこで、消費税を モデルとして最終的に便益を享受する消費者に費用負担を求める「炭 素消費税(Carbon Consumption Tax:CCT)」を提唱した。温暖 化対策の費用は、従量的で応益的な間接税として負担を求めるべき、としている。

 

 従量性は、排出量の多寡に応じて負担することで、応益 性は、製品・サービスの便益を享受する消費者に負担を求める考えだ。CCTの徴税コストを考慮して、販売時点では供給サイドで の排出量、利用時点では消費するエネルギー等の購入の際に、エネルギー起源に対応した排出量に賦課する案を示している。

 

 提言は、CCTの導入で、市場を通した競争と選択のメカニズムが働き、製品・サービスのライフサイクルを 見通した排出総量の最小化につながることが期待できる、との展望を示している。ただ、フットプリントの整備で「見える化」されるカーボン情報はあくまで企業が抱える負荷である。その削減費用を消費課税とすることに、国民の理解が得られるだろうか。

 

 企業が温暖化課税分(外部不経済)を加味した製品・サービスを提供し、それを、消費者・消費市場が情報の見える化措置を伴って、評価・選別するというのが本来の「経済的理解」であるはずだ。企業努力で温暖化課税分を縮小できる企業こそが、市場に示す価格力で優位に立ち、消費者に支持される、というのが市場の機能を生かす意味である。同友会には、市場を踏まえた提言をしてもらいたい。

 https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/uploads/docs/180118a.pdf