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第9回サステナブルファイナンス大賞授賞式開く。同ファイナンスの「市場化」の進展、明瞭に。しかし、今年の市場動向は、国内のGXを含め「ポリシーフレームワーク」の激震で左右か(RIEF)

2024-01-18 21:38:18

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 一般社団法人環境金融研究機構(RIEF)主催の第9回サステナブルファイナンス大賞の授賞式が17日、東京・内幸町の日本記者クラブで開かれた。今回の選考では、大賞に稲作クレジットの開発・販売を内外で手掛けるスタートアップ企業のGreenCarbon社(東京)を選んだほか、優秀賞、特別賞、国際賞、地域金融賞、NGO/NPO賞として、合計11社・機関(12団体)を選出した。

 

 授賞式には、国際賞を受賞したポーランド国営銀行のポーランド開発銀行(GBK)を代表して、駐日ポーランド大使のパヴェウ・ミレスキ氏、同じく同賞を授賞したインドネシア政府を代表して、駐日大使館財務税関部長のレニ・ヌッルラエニ氏も出席した。

 

 授賞式では、同賞審査員会議を代表して、鳥谷玲子(預金保険機構運営委員会委員)氏が選考結果について講評を行った後、公益財団法人国際金融情報センター(JCIF)理事長の玉木林太郎氏が記念講演を行った。

 

 鳥谷氏は講評で、「第一回からこれまでの大賞の審査に参加している。これまでを振り返ると、環境金融・サステナブルファイナンスの取り組みは、かつては『グリーンボンド第一号』『業界初』といった初物的評価が多かったのに対して、今回は、市場ベースでの取り組みが増え、授賞企業の業態も、銀行より証券会社や資産運用機関が中心になるなど、『市場化』の流れが明瞭になってきたと思われる」と評価した。

 

 さらに、今回の審査で、国際賞を2件選んだことを踏まえ、「日本の金融市場でESG資金調達をする海外企業・機関の取り組みも増えており、着実にサステナブルファイナンスの内外市場の広がり、つながりも、進んでいるとの手応えを感じた」とした。

 

 記念講演を行った玉木氏は「2024年は、11月の米国での大統領選挙、6月のEUでの欧州議会選挙があるなど、各国での選挙が想定される『政治の年』になる」と指摘。特にこれまでEUのグリーン政策をリードしてきた欧州議会では、グリーン党等が後退し、右翼政党が台頭する兆候があるほか、米国でも反ESGの動きが高まるなど、「国の内外で『ポリシー・フレームワーク』に激震が走る可能性がある」とトレンド変化の可能性を指摘した。

 

 そうした「変化の予兆」の中で、わが国はグリーン・トランスフォーメーション(GX)政策を掲げているが、同氏は「正直なところ、これまでのところ(市場はGXを)十分に消化できていない」とした。その理由として、①GXと、日本政府が国際公約するNDCの中間目標とがどう関係するのか②GX政策の対象は製造業重視で、長期的な温室効果ガス(GHG)排出源である住宅・建設業や農業等の分野への配慮はほとんどみられない③今後、国内金利が復活したら、多くの産業・企業はサステナビリティに適合できるのか――等の課題を提起した。

 

 鳥谷氏が指摘するように、サステナブルファイナンスの「市場化」が進む中で、玉木氏が警鐘を鳴らす「ポリシー・フレームワークの激震」が日本においては、どう展開するのかーー。2024年の、わが国でのサステナブルファイナンスの動きが、政策と市場の協調で進むか、あるいは両者の摩擦・対立から混迷に転じるのか。その動向次第で、2024年のサステナブルファイナンス大賞の選考も大きく影響を受けそうだ。