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世界銀行など 「銀行の気候変動対応」で、世界共通の基本原則を作成、公表へ(RIEF)

2015-12-05 23:50:04

Climate financeキャプチャ

 世界銀行など国際公的金融機関と一部民間銀行が共同で、銀行産業のための5つの気候変動原則をまとめた。

 

 Environmental Finance誌によると、原則は「金融機関への気候行動の組み入れ(Mainstreaming Climate Action Within Financial Institutions)」と題し、金融機関が自発的に取り組む気候変動対策の基本原則を整備した。パリで開いている国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において週明けに公表し、世界中の官民金融機関に署名を求めていく、としている。

 

 原則をまとめたのは、世銀のほか、アフリカ開発銀行、アジア開発銀行、フランス開発庁、 ラテンアメリカ開発銀行(CAF)、南アフリカ開発銀行、フランス預金供託金融公庫( Caisse de Depots)、クレディ・アグリコ、欧州復興開発銀行(EBRD)、欧州投資銀行(EIB)、米州開発銀行など。

 

 原則は①気候戦略宣言(Commit to  climate strategies)②気候リスク管理(Manage climate risks)③低炭素化目的の促進(Promote Climate-smart objectives)④気候変動影響の改善(Improve climate Performance)⑤気候変動活動の情報開示(Account your climate action)—-の5つからなる。銀行に対して、投融資活動先のカーボンフットプリントと、銀行自身のフットプリントを減少させるための戦略の立案と実行を奨励するためにデザインされている。

 

 5つの原則は、銀行が気候変動に伴うリスクとビジネス機会の両面を、金融機関が資金を配分する投融資活動において、考慮すべき基本的事項として整備した。

 

 ①の「気候戦略宣言」は、経営戦略として気候変動問題に対応することを求めている。気候変動問題には組織的対応を求め、立案する戦略は、気候変動問題を金融機関の投融資・アドバイザりー活動等に統合化するため、経営層のリーダーシップに基づき、戦略的優先度と政策的公約、目標を明確化すべき、としている。

 

 ②の「気候リスク管理」では、気候変動リスクを理解し、管理する活動をとることを求めている。リスク管理の対象として、投融資のポートフォリオのほか、計画中のもの、新規投資を評価し、取引先の顧客とともに、気候変動の影響への対応力を高め、投資の長期的な持続可能性を改善するための適切な手段を決めるよう位置付けている。

 

 ③の「低炭素化目的の促進」では、低炭素化や気候変動に対応する投資をするうえでのリスクや障害を除去する最適な手段や知識、対応策を生み出すアプローチの促進を求めている。これらの手法等には、新たな追加的ファイナンスや特別の金融的ビークル・プロダクトとして、グリーンボンドや官民リスク共有メカニズム、あるいは途上国向けのブレンド・ファイナンスなどを例示している。また、金融機関だけでなく、取引先や、格付け機関、監査法人などの他のステークホルダーとともに取り組み、さらなる展開を目指す、としている。

 

 ④「気候変動影響の改善」では、銀行の投融資活動が気候変動に与える影響を改善するための手段を設けるよう求めている。そうした影響を評価するため、気候変動の優先度と連動した主要指標のモニタリングを取り入れる。温室効果ガス排出量をはじめ、グリーン投資を支援するための融資やアドバイザリー活動、気候変動関連資産の配分、そして金融機関自身の気候フットプリント等の改善も求めている。

 

最後の⑤の「気候変動活動の情報開示」では、金融機関自身の気候変動活動として、クリーンエネルギーやエネルギー効率化、さらに気候変動対応のための投融資などの活動の透明性と情報開示を求めている。また金融機関自身の投資ポートフォリオの気候フットプリントと、気候リスクへの取り組み状況なども、透明性と情報開示の対象としている。

 

 銀行業界では、これまでもCSR(企業の社会的責任)の視点や、最近では石炭関連産業への投融資のDivestment活動宣言などで、気候変動リスクへの対応を打ち出すところが、欧米金融界を中心に増えている。ただ、そうした取り組みの内容や活動の情報開示などについては、統一性が必ずしもなく、投資家や顧客にわかりづらい、との指摘が出ている。今回の世銀などがまとめた自主的5原則は、そうした現状を整理する役割を果たしそうだ。

http://www.worldbank.org/