HOME10.電力・エネルギー |牛のふん尿から液体燃料メタノール製造。北海道の興部町が、大阪大学等と連携し事業化へ。CO2排出しない再エネ燃料、化学繊維の原料化も可能。牛の廃棄物対策で「脱炭素」に道(各紙) |

牛のふん尿から液体燃料メタノール製造。北海道の興部町が、大阪大学等と連携し事業化へ。CO2排出しない再エネ燃料、化学繊維の原料化も可能。牛の廃棄物対策で「脱炭素」に道(各紙)

2021-02-10 12:58:12

hokaido001キャプチャ

 

  各紙の報道によると、北海道の興部(おこっぺ)町は大阪大学などと共同で、町内で広く飼育されている牛のふん尿から発生するバイオカスを液体燃料のメタノールに変換する事業を展開する。メタノールは、CO2を出さない液体燃料として利用できるほか、化学繊維の原料にもなる。「脱炭素」の街づくりに生かすことを目指す。

 

 (写真は、㊧から2人目が硲一寿・興部町長、3人目が大久保敬阪大教授)

 

 NHK等が報じた。興部町はオホーツク海に面し、人口の3倍に相当する約1万頭の牛が飼育されている酪農の町。同町は昨年、大阪大学と連携協定を結んだ。協定に基づき、阪大の大久保敬教授(光有機化学)らが世界で初めて開発した技術を使って、牛のふん尿からメタノールの開発を進めてきた。

 

 今回、技術面での成果を踏まえ、実証化するための次の段階として試験プラントの建設に移行することを発表した。試験プラントには、阪大のほか、産業ガス大手のエア・ウォーター北海道(札幌)、岩田地崎建設(同)も参加する。今年度からプラントの建設を初め、実証化試験は2022年度から2年をめどで続け、25年度の実用化移行の見通しだ。

 

 計画全体では、牛のふん尿を使ってメタノールを年間80㌧製造する考えだ。製造したメタノールは再エネとみなされる。町内の公共施設や水産加工施設で使うエネルギーの全量と、乳業工場の3分の2のエネルギーをまかなう。

 

 建設する試験プラントでは、バイオガスに含まれるメタンを特殊な液体に溶かした後、紫外線を照射することで、メタノールとギ酸に変換する。作業工程は、常温・常圧で可能。メタノールの変換効率は従来の1%から14%(ギ酸は従来の0%から85%)と大幅に向上し、「無駄なく使い切れる」(大久保教授)という。

 

 将来は、量産化で製造コストをさらに下げて、メタノールを合成繊維や塗料、農薬など様々な製品の原料として外部へ販売することも検討したいとしている。2030年度以降は、興部町以外の道内外での展開も想定している。大久保教授によると、日本ではメタノールを全量輸入しているが、国内の乳牛のふん尿をすべて使えば、輸入量の2割を代替できるという。

 

 興部町ではこれまでも、ふん尿を活用したバイオガス発電も手がけてきた。しかし、再生エネルギーの固定価格買取制度(FIT)による売電期間の終了後にバイオガスをどう有効活用するかが課題となっていた。電力の場合、蓄電設備等が必要になるが、液体燃料のメタノールやギ酸に変換して保存することでより経済的に「脱炭素」化を実現できるとしている。

 

 同町の硲一寿町長は「海外に依存するエネルギーを自分たちの産業から生み出していきたい。この協定で開発される技術を北海道全体の発展につなげたい」と話している。

https://www.town.okoppe.lg.jp/cms/

https://digital.asahi.com/articles/ASP29750DP29IIPE005.html