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収拾のめど立たない放射能の影響 [農漁業被害]輸入停止、検査証明要求が34カ国・地域(現代ビジネス)

2011-08-13 19:09:28

セシウム入りのワラでも餓死させられるよりはましだ モゥー いい加減にしろよ日本人
セシウム入りのワラでも餓死させられるよりはましだ モゥー いい加減にしろよ日本人


東日本大震災は日本の農漁業に大きな爪痕を残したが、特に回復の見通しが立てにくいのは福島第1原発事故による放射能の影響だ。事故収束を目指す国や東京電力の対策が一進一退を続ける中、原発から遠く離れた地域の産品からも規制値を超える放射性物質が検出され、関係者の苦悩の色は深い。

放射能汚染を理由に日本からの食品輸入を規制する国もまだ多く、政府が掲げた農林水産物の輸出額1兆円という目標は遠ざかる一方だ。

 

農林水産省が7月20日現在でまとめた資料によると、日本産の食品について輸入を停止したり、放射性物質の検査証明などを要求しているのは34カ国・地域に上る。

 

自国による検査を強化した国も含めると、計42カ国・地域となる。カナダのように輸入規制を解除し、自国内でのサンプル検査だけに改めた国もあるが、全体としては4月ごろからほとんど増減がなく、緩和に向かう傾向はみられない。

 

各国の対応を見ると、日本にとって最大の農林水産物輸出先である米国は福島、茨城、栃木、千葉、群馬、神奈川県のホウレンソウやお茶、コウナゴなど一部品目の輸入を停止。福島、茨城、栃木3県の乳製品や野菜・果実(加工品を含む)については放射性物質の検査証明を求めている。これでも中東や欧州の各国と比べれば緩い方だ。インドや豪州なども自国側での検査だけで、冷静な対応と言える。

 

それ以外の多くは日本製食品の輸入に高い「防波堤」を築いている。過剰反応が特に目立つのは中東諸国で、イラク、クウェート、モロッコ、エジプトはあらゆる日本食品の輸入を全面的に停止。日本の近隣諸国では、中国が輸入停止の対象産地を当初の12都県から10都県に減らしたものの、他の産地にも検査証明や産地証明を求めるなど厳しい規制を続けている。韓国は福島など6県のホウレンソウやお茶などを禁輸。その他の都道府県についても検査証明や産地証明を課している。

 

欧州連合(EU)は宮城、山形、福島、群馬、栃木、茨城、千葉、長野、埼玉、東京、神奈川、静岡の12都県の全食品に検査証明を要求。他の道府県については産地証明を条件としている。ノルウェー、スイス、アイスランドといったEU非加盟の欧州諸国は更に厳しく、新潟を加えた13都県が対象だ。

 

こうした輸入規制の多くは、日本国内で行われている出荷制限措置などの範囲を大きく超えるもので、日本政府は「科学的根拠がない」と反発。世界貿易機関(WTO)の事務レベル会合や5月の日中韓首脳会談、6月22、23日にパリで開かれた主要20カ国(G20)農相会合(日本からは篠原孝副農相が出席)などの場で繰り返し緩和を求めてきた。

 

しかし、日中韓首脳会談では、中国の温家宝首相が一部緩和を表明するなど「リップサービス」はあったものの、抜本的な改善は図られていないのが実情だ。7月に入ってからは、稲わらを食べた牛の肉から規制値を超える放射性セシウムが検出されるケースが国内で相次ぎ、各国が輸入規制の対象品目を食肉などに広げる可能性もある。

「攻めの農業」に暗雲


 

日本産食品に厳しい視線が向けられる中、当然ながら輸出には急ブレーキがかかっている。財務省の貿易統計を元に農水省が集計したところ、5月の農林水産物輸出額は306億円で、前年同月比16・6%減少。減少幅は4月の14・7%から1・9ポイント広がり、依然として影響が拡大し続けていることを裏付けた。特に水産物は5月が29・6%減と落ち込みが激しい。

 

農水省によると、各国政府による輸入規制だけでなく、民間レベルの反応も厳しい。▽欧州に野菜を輸出していた業者が取引を拒否された▽マグロやノリなどの輸入先が韓国産に切り替えられた▽米国向けに輸出した豆腐が税関で検査に時間がかかり、廃棄に追い込まれた▽タイのカツオ・マグロ缶詰の最大手メーカーが「政府の産地証明・放射能検査証明があっても北西太平洋で漁獲されたカツオ・マグロは買わない」と日本の大手商社に通告—などの事例が報告されているという。

 

近年、日本の農林水産物は品質や安全性が高く評価され、輸出実績も04年の3609億円から昨年は4920億円と、おおむね順調に増えてきた。輸出をテコに農林水産業の活性化を図る「攻めの農業」も叫ばれ、政府は農林水産物の輸出額を2017年までに1兆円に伸ばすとしてきたが、原発事故の影響で目標年次の見直しも検討されている。

 

逆に、農林水産物の輸入は5月に20・8%増の7389億円と大幅に増加。この流れが定着すれば、既に先進国最低水準の食料自給率(カロリーベース、09年度で40%)が更に低下する恐れもある。今年度の自給率は来年夏にまとまるが、もし40%割れとなれば06年度以来5年ぶりだ。

 

世界に広がる風評被害は農家や漁業者、食品メーカーや流通業者の経営基盤を直撃する。売り上げが減るだけでなく、検査証明や産地証明に多大なコストと時間がかかり、鮮度など品質の劣化にもつながるからだ。検査費用は1品目あたり2万~3万円程度と高額で、品目ごとに要求されるため、採算が悪化して輸出をあきらめる事例も少なくないという。

 

また、国内で食品の放射性物質検査に対応できるのは約30機関しかない。これらの機関には、他にも食品や土壌、水質などの検査依頼が殺到しているため、輸出業者らのニーズに応じ切れない実態もある。

 

国の原子力損害賠償紛争審査会は国内で生じた風評被害を一定の枠内で補償する指針を示したが、輸出については「47都道府県を一律に輸入停止の対象にするといった過剰な規制まで東京電力に責任を負わすのか」といった意見もあり、論議の行方は不透明だ。賠償の範囲が狭く限定された場合、多くの生産者や輸出業者は「泣き寝入り」を強いられることになりかねない。

日本食を世界無形遺産登録へ


 

日本食への逆風が強まる中、農水省は7月5日に日本食文化の世界無形遺産登録に向けた検討会を設置した。来年3月の申請へ向けて検討会を重ね、10月の取りまとめを経て最短で2年後の登録をめざすという。すしや懐石料理など日本独自の食文化をアピールし、原発事故で傷ついたイメージを回復することも狙いだが、政府と東電の対応が迷走を続ける限り、成果は未知数と言わざるを得ない。

 

 

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/14819