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スウェーデンの社民党主導の新連立政権 原発維持政策から100%再生可能エネ政策に転進か。観測高まる(FGW) 

2014-10-06 17:07:02

スウェーデン新連立政権のロベーン首相
スウェーデン新連立政権のロベーン首相
スウェーデン新連立政権のロベーン首相


国際的な原発業界の間で、現在、原子力比率が40%のスウェーデンが、脱原発を目指すかもしれないとの観測が浮上している。

 

スウェーデンは先月行われた総選挙で、社会民主労働党(社民党)を軸とする野党3党の陣営が、与党連合に勝利した。ただ、議席は過半数を得られていない。その中で、社民党は、連立を組む「緑の党」との間で、「脱原発、100%再生可能エネ発電」に向けたエネルギー委員会を設立したことが観測の背景にある。

 

選挙で敗れた与党連合は2009年に原発政策の維持と、既存原発廃炉の場合は新型原発によるリプレースで合意していた。当時、野党だった社民党のロベーン党首(現在、首相)も、当時の与党方針に対して「スウェーデンは当分の間、原発は必要」とのスタンスを明らかにしていた。

 

同国には原発が10基稼動中で、発電に占める原発比率は約40%と、水力約50%に次ぐ比重を占めている。ただ、同国では1979年のリーマイル原発事故の後、国民投票で新規原発の建設禁止と、原発代替エネルギー源の開発を決めたが、実際は代替手段の問題で、原発維持の現実路線をとってきた。

 

しかし、今回、連立を組む緑の党は「100%再生可能エネルギー」を求めているほか、日本の福島原発事故以来、原発安全管理のコストが上昇していることや、同じ北欧諸国のデンマークなどが100%再生可能エネ国家を目指していることなどの事情も、新政権のエネルギー政策に影響を及ぼしているとみられる。このため、原発の扱いが改めて政治的焦点となっているわけだ。

 

今後の政権運営のバランスを意識してか、ロベーン首相は最近、「スウェーデンは水力、風力、森林資源のバイオマスなどの再生可能エネ発電で、非常に有利な立場にある」との認識を示した。そのうえで、「早晩、100%再生可能エネ発電のエネルギーシステムを持つだろう」とまで発言した。

 

社民党や緑の党の再生可能エネシフト発言は、それぞれ別々の思惑から出ているものとみられる。しかし、これまでの論点だった稼動期間満了後の原発のリプレースについて、再び原発で代替するのではなく、再生可能エネ発電か、省エネ等のエネルギー効率化が有力になっていることを示唆するに十分なスタンスだ。

 

社民党などは、2020年において、再生可能エネ発電を少なくとも30TWhにまで高める考えで、その後に2030年目標を追加することになる。追加的な再生可能エネ発電としては、洋上風力や太陽光発電が中心になるとしている。

 

原発継続への疑念が出ているのは、安全上のコスト上昇に加えて、原発廃棄物の処分問題も大きい。スウェーデンが脱原発にシフトすると、他の欧州諸国に及ぼす影響も少なくないとみられる。

 

http://www.world-nuclear-news.org/NP-Sweden-faces-future-without-nuclear-01101401.html