HOME |「原発事故さえなければ通信」発行 住職が福島の苦悩訴え(河北新報) |

「原発事故さえなければ通信」発行 住職が福島の苦悩訴え(河北新報)

2012-01-12 16:02:38

被災地の声を届ける「原発事故さえなければ通信」と吉岡さん=福島市の円通寺
福島第1原発事故に苦しむ被災者の実情を伝えようと、福島市の僧侶が独力で「原発事故さえなければ通信」を発行している。昨年11月に第1号を出したところ口コミで評判が広がり、全国から注文が相次いだ。予想外の反響で結局、1万部作った。第2号も元日付で発行。「事故さえなければ、普通の生活を送れたのに…」という福島県民の切実な思いを、全国に発信し続けている。

被災地の声を届ける「原発事故さえなければ通信」と吉岡さん=福島市の円通寺


 「原発事故さえ―」はA4判カラーの4ページ。福島市にある円通寺(曹洞宗)住職の吉岡棟憲さん(64)が、一人で編集に携わっている。「苦境にある福島県民の思いを知ってほしかった」と吉岡さんは話す。
 第1号の部数は当初、4000部だった。無料で送料もなしに県外の知人らに送付したところ、注文が相次いで増刷した。
 4000部刷った第2号のトップ記事は「間もなく10カ月、見えない収束」。福島県の被災者にとって、昨年1年間を表す漢字は「絆」よりも「嘘(うそ)」が適していると書いた。
 原発事故をめぐって国や東京電力が情報を隠し、福島県民は一層苦しい立場に追いやられる結果になった、という思いからだった。
 農産物の出荷停止や風評被害に見舞われている農家の悩みや、賠償金支払いに時間がかかり過ぎること、県外への避難者が増え続けていることなどを紹介している。
 吉岡さんは「政府は原発事故の『収束宣言』を出したが、実際は収束には程遠い。悲劇を風化させないために、地元の実情や生の声を広く訴えなければならないと思った。隔月で発行し、変わっていく福島の状況を伝えていきたい」と言う。
 「原発事故さえ―」の連絡先は円通寺024(546)6401