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被災地の今 町民目線で 岩手・大槌で2地域紙誕生(河北新報)

2012-08-19 22:11:05

刷り上がった「大槌新聞」を紹介する高田さん


「大槌みらい新聞」を手にする松本さん(左)とボランティア記者


刷り上がった「大槌新聞」を紹介する高田さん

東日本大震災で被災した岩手県大槌町で、地域情報を町内外に発信する「大槌新聞」と「大槌みらい新聞」の二つの「新聞」が誕生した。震災で釜石市と大槌など周辺市町をカバーしていた地域紙「岩手東海新聞」が休刊となり、身近な話題が埋もれがちになる中、独自の視点や手法で被災地の現状を見詰めている。

 「大槌新聞」は6月末、地元町民が運営する一般社団法人「おらが大槌夢広場」が創刊した。
 A3判カラー2ページで、週1回約100部発行。町内の仮設住宅団地の談話室や「おらが」が運営する復興資料展示施設「大槌復興館」などに掲示している。
 

取材、編集を1人でこなす高田由貴子さん(37)は「町民が今、一番知りたいのは今後のまちづくりの情報。どこに自宅を再建できるのか、区画整理はどうなるのかなど行政の話題を分かりやすく伝えたい」と話す。
 新聞作りは初めて。復興関連の町の説明会や会議は必ず取材し記事にまとめ、パソコンの市販ソフトで編集する。

 「高齢者にも読んでほしい」と文字は一般の新聞より大きくし、ですます調の親しみやすい文章を心掛けた。町民のペットを紹介するコーナーも設けている。
 大槌で生まれ育ち、被災した高田さんは「『復興が遅い』という町民の不満はよく分かるが、行政が懸命に仕事をしていることも分かった。被災者の立場、町民の視点を大事に、少しでも情報不足の状況を補うことができれば」と語る。

 「大槌みらい新聞」は15日、創刊準備号が発刊された。任意団体・日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)と、NPO法人ボランティアインフォ(仙台市)が共同で企画した。

 茨城新聞の元メディア事業部長松本裕樹さん(51)が大槌に常駐。JCEJが募集する大学生やボランティアの記者ら数人が週単位で町に滞在し、取材活動をする。
 準備号はA3判カラー2ページで約300部発行。1面トップは「この夏、町最大の話題」(松本さん)になった全国高校野球選手権大会始球式で捕手を務めた大槌高野球部の金野利也さんを紹介。町のショッピングセンターなどで配布している。
 紙媒体だけでなく、ホームページやツイッター、フェイスブックも活用。町民記者を募集したり、ツイッターなどの使い方を紹介するワークショップを開催したりして、町民自らが情報発信する新たな地域メディアを模索する。
 資金は個人団体の寄付で賄い、発行は月1回。創刊号は9月中旬、4ページで約5000部発行し無料配布する。
 松本さんは「町民に身近な話題を届けるとともに、町の現状や魅力を町外に広く知ってもらうため町民と一緒に情報発信したい」と話している。

http://www.kahoku.co.jp/news/2012/08/20120819t35014.htm