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昨年の途上国向け移民送金、前年上回る―世銀統計(WSJ)

2012-09-24 13:51:58

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開発途上国の家族に対する海外移民労働者の昨年の送金総額は、前年を上回った。今年は世界経済が不透明であるにもかかわらず、さらにこれを上回る見通しだ。 米国は送金の資金源で世界最大で、何百万人という中南米労働者の送金が大半を占めた。

 世界銀行によれば、世界全体をみると2億1500万人の移民労働者は昨年、開発途上国に約3720億ドル(現在の為替レートで約29兆円)を送金し、前年の3320億ドルを上回った。今年は3990億ドルに達し、2014年までには4670億ドルになると予想されるという。

 送金は近年、本国の家族を養い、途上国経済を安定させる上で主要な役割を果たしている。送金額は08、09年に一時的に減少したが、その後急速に回復した。この結果、送金は多くの途上国にとって、世界経済の景気後退という潜在的に災厄的になり得る打撃の緩衝要因になっている。

 米国の労働市場が弱く、移民の取り締まりが強化され、国境における暴力事件で移民が減少したにもかかわらず、中南米の中央銀行は今年、送金額が著しく増加していると報告している。例えば、メキシコは今年1~7月間で5%増加して137億ドルに達した。増加は主として米国からの送金だった。エルサルバドル中銀によれば、同国出身の移民労働者は1~8月間で前年同期比7%増の26億ドルをエクアドルに送金した。グアテマラの送金額は同国GDP(国内総生産)の12%を占めているが、今年も増加している。

 ワシントンのシンクタンク、米州ダイアローグは、今年の中南米・カリブ海向け送金額は7%ないし8%増加すると予想している。同地域の昨年の送金受領額は690億ドルで、前年の640億ドルを上回った。

 米州ダイアローグの送金ディレクター、マニュエル・オロスコ氏は、幾つかの要因によってメキシコ向けの送金額が大きくなっていると指摘している。メキシコ人は米国への移民が最も多い。米政府による米国向け季節労働ビザの発給数は過去最高で、昨年は27万人近くに達し、06年の14万4000人を大きく上回っている。

また、教育を受けた女性の送金が増大している。米国で働いているメキシコ人女性の約3人に1人は大卒ないしそれ以上の学歴で、その人数も増加している。オロスコ氏は「彼らは他の誰よりも多く送金している」と語った。

 加えて、米国に数年住んでいる移民で、本国で住宅を建てたり、事業に参加したり、あるいは地域団体を支援するために送金する人々がますます増えている。オロスコ氏によれば、いわゆるトランスナショナル(国を超えて活動する)移民は全体の8%を占めるに過ぎないが、彼らの送金額は他の移民を平均して10%上回っているという。

 開発途上国にとって送金は依然としてハードカレンシー(外貨)の主要な供給源で、外国直接投資や外国援助の金額を上回ることもしばしばだ。最近発行された世銀の書物「グローバル金融危機期とその後の移民と送金」によれば、インドネシア、インド、メキシコなどの諸国は、海外で働いている移民からの送金の流入によって、世界的な景気下降による悪影響が幾分減免されているという。

 2008年から09年まで、世界の送金総額は6%減少したが、その減少率はインド、インドネシア、フィリピンなどへの外国直接投資額の2ケタのマイナスほどではなかった。

 この書物を共同編集した世銀のエコノミスト、ディリップ・レーザ氏は「移民が働いている諸国での金融危機のため、送金額は減少するとの予想があったが、09年の危機のピーク時に減少したあと、送金は再び増加した」と指摘。「そればかりだけでなく、現在は過去最高水準にある」と語った。

記者: Miriam Jordan  

http://jp.wsj.com/Economy/Global-Economy/node_517363/?nid=NLM20120924