HOME9.中国&アジア |「がんの村」があぶりだす中国の環境破壊の実態 経済成長のしわ寄せ(CNN) |

「がんの村」があぶりだす中国の環境破壊の実態 経済成長のしわ寄せ(CNN)

2013-07-08 13:43:38

かつては肥沃な土地を誇ったが、今では「がんの村」に
かつては肥沃な土地を誇ったが、今では「がんの村」に
かつては肥沃な土地を誇ったが、今では「がんの村」に


中国・塢里村(CNN) 中国東部・浙江省にある塢里村。かつては緑あふれる丘と肥沃(ひよく)な大地で知られた村だが、今では村人は自分たちのふるさとをこう呼ぶ。「がんの村」と。

村人の1人、フェン・シャオフェンさんは家にあった夫と息子の遺影を取材班に示しながら、「ここには住みたくないし、ここで夜、眠りたくない」と訴える。「夫は一家の大黒柱でした。夫が死んだとき、家の柱が折れたようでした。そして、息子も死にました」

1990年代、政府の役人がやってきて、裕福になれると約束したという。しかし、年配の女性は「地元の役人が懐を潤しただけだ」と憤る。

その後、村にはいくつもの繊維会社がやってきて町中に工場を建設した。村人たちは、工場ががんの原因だと考えている。

「がんの村」と言われ始めたのは数年前だ。当時、中国人のジャーナリストや活動家が中国各地に、がんの発症率が不自然に高い場所があることを発見した。その多くは工業化された農村地帯だった。

当時香港の雑誌を中心に動いていた活動家のデン・フェイ氏は農村地帯の水質汚染の影響に注目した。

デン氏は「水は人々にとって非常に重要であるため、汚染は健康により多くの影響を及ぼす」と指摘。「中国は適切ではない経済成長パターンの負の影響をこうむっている。中国は将来も重い環境汚染による高い代償を支払うことになるだろう」と危惧する。

世論の突き上げもあり、中国政府は今年に入って、「がんの村」の存在を認めた。当局は声明で「中国では毒性のある化学製品が製造され、利用されている。飲み水に対する深刻な状況を経験している場所も多く、汚染が、がんの村の発生といった深刻な社会問題の発生を引き起こしている」と述べた。

デン氏は「非常に重要な一歩だ」と政府ががんの村の存在を認めたことを評価する。「実際にこの問題に対処するには、問題の存在を認めるしかない」と付け加えた。

しかし、塢里村で活動するウェイ・ドンインさんにとっては、存在を認められただけでは不十分だ。

ウェイさんは居間の床に地図を広げ、写真を指し示しながら、「ここには死んだ魚が打ち上げられた」「ここの運河が赤く染まった」と説明する。ウェイさんは10年以上にわたり、水質汚染が広がる様子を地図に記してきた。

ウェイさんは2002年にがんの発症が疑われた。その後、腫瘍(しょうよう)は除去されたが、このことがきっかけで活動を始めたという。

申し立てや請願を行ったことで、ウェイさんは地元政府の頭痛の種となった。ウェイさんによれば、いやがらせや脅迫を受けているという。CNNが取材を行った日も、保安員とみられる人物が取材の様子をこっそりと写真に収めていた。

ウェイさんは一部の染物工場や繊維工場によって、がんが引き起こされていると確信している。しかし、水を処理しているかいないかにかかわらず全ての工場が同じ河川に排水しているため、汚染している工場としていない工場を区別することはほとんど不可能にちかい。

国際環境団体グリーンピースは、説明責任の欠如が「完璧な煙幕」になっていると指摘する。同団体がさきごろ発表した報告書によれば、この地域の水を調査した結果、少なくとも10種類以上の毒性のある化学物質が発見されたという。

匿名を条件に語った地元当局者は「状況については認識しているし、問題に対処すべく最大限の取り組みを続けている」としたものの、詳細については言及しなかった。

ウェイさんは「私が望むのは、きれいな空気を吸い、安全な水を飲み、汚染されていない土を使うことだけ。私が望むのはそれだけだけど、高望みをしすぎているのかも」と語った。

 

http://www.cnn.co.jp/world/35033311.html