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JICA ミャンマーの日本企業向けティラワ経済特区開発事業で 住民の「生活悪化」による異議申し立て適格と判断 初の本格調査へ(メコン・ウォッチ)

2014-07-10 12:50:34

ティラワの開発予定地域
ティラワの開発予定地域
ティラワの開発予定地域

7月4日、日本の官民が連携して進めているミャンマー・ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業(※)について、国際協力機構(JICA)の異議申立審査役が、現地住民3名の「生活悪化」に関する異議申し立てを「適格」と判断し、異議申立手続を開始する検討結果を公表しました。
→ JICAウェブサイト上 「異議申立書にかかる検討結果」
http://www.jica.go.jp/environment/present_condition.html



今後、審査役は約2ヶ月間、JICA「環境社会配慮ガイドライン」(以下、ガイドライン)の遵守・不遵守にかかる事実の調査、また、当事者間の対話の促進など、本格的な調査を行ない、JICA理事長に報告書を提出することになります。JICA(旧・JBIC円借款部門)の異議申立制度が2003年10月に施行されて以来、異議申立手続の下で本格調査が実施されるのは、今回が初めてのことです。



同事業については、6月2日、住民3名が来日し、JICA本部(東京都千代田区)で異議申立書を審査役に直接手渡していました。申立書では、同事業の先行開発区域(フェーズ1、約400ヘクタール)の住民が移転に伴い被った損害、また、残りの開発区域2000ヘクタール内の住民が被る恐れのある損害等について提示。本事業でJICAガイドラインが遵守されておらず、結果として、住民の生活が悪化している点等につき指摘し、調査と問題解決を求めています。
→ 6月2日プレスリリース 「ティラワ経済特別区について移転住民がJICAに異議申し立て」
http://www.mekongwatch.org/resource/documents/pr_20140602.html


 本事業のフェーズ1は2013年11月に着工し、68家族(約300人)がすでに移転を強いられました。 現在、この68世帯が暮らす移転地では、農地や日雇いの仕事などを失ったまま、8ヶ月間、代替の生計手段を見つけることができない住民が困窮しています。受け取った補償金を使い切り、借金を余儀なくされている世帯や、家屋を売却して移転地を後にする世帯も出ています。また、雨季を迎え、大雨の後に排水口の水が溢れ返って冠水する家が出るなど、住環境の面でも問題は未解決です。今後の残り2,000ヘクタールの開発では、さらに1,000家族以上(約4,000人)が移転を迫られることになりますが、同様の影響を受けることが懸念されています。


影響住民の生活状況がこれ以上悪化せぬよう、また、早急に状況が改善されるよう、JICA審査役は、自ら現地の状況を実見し、異議申立書で指摘されている内容一つ一つについて、幅広い住民への丁寧なヒアリングを行なうことが求められています。

 

本件に関するお問い合せはこちらへ
特定非営利活動法人メコン・ウォッチ(担当:満田)
TEL:03-3832-5034、もしくは、090-6142-1807   E-mail:info@mekongwatch.org

 

ミャンマー・ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業
パッケージ型インフラ事業として、日本の官民を挙げて進められている。ヤンゴン中心市街地から南東約23kmに位置するティラワ地区2,400ヘクタールに、製造業用地域、商業用地域等を総合的に開発する事業。フェーズ1(400ヘクタール)にODA海外投融資による出資をJICAが決定。三菱商事、住友商事、丸紅が参画。JICAは残り2,000ヘクタールにおいても協力準備調査を実施中で、環境アセスメントや住民移転計画の策定を支援している。

詳細はこちらのURLをご覧ください。→ http://www.mekongwatch.org/report/burma/thilawa.html

http://mekongwatch.org/resource/documents/pr_20140707.html