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御嶽山噴火犠牲者60人以上に。国の活火山管理に責任はなかったか(?)(FGW)

2014-10-03 17:21:28

「平常レベル」の登山環境として、多くの犠牲者を出した御嶽山
「平常レベル」の登山環境として、多くの犠牲者を出した御嶽山
「平常レベル」の登山環境として、多くの犠牲者を出した御嶽山


御嶽山噴火での犠牲者数が60人以上に増えそうだ。突然の痛ましい事故となってしまったが、国土の管理と、火山観測をしている国に責任はないのか。

 

御嶽山は、政府の火山噴火予知連絡会により、活火山の中でも特に監視・観測体制を充実させる必要がある47火山の一つにあげられている。活動が活発な鹿児島の桜島と同様に、地震計や遠望カメラなどを整備、24時間観測体制が敷かれている。

 

報道によると、御嶽山では9月10日だけで52回、翌11日も85回の火山性地震が多発した。このため気象庁は、11日に火山解説情報を発表し、山頂付近で火山灰が噴出する可能性があるとして、ホームページで警戒を呼びかけた。また地元自治体にも情報を提供したという。

 

しかし、マグマ活動に関連する火山性微動や地殻変動は観測されなかったため、噴火警戒レベルは1(平常)のままとした。気象庁から情報提供を受けた自治体の一つ、岐阜県下呂市防災情報課は「地震の多発を注視していた。しかし、その後は減っており、噴火につながるとは考えず外部に発信しなかった」と説明している。

 

気象庁自体も、自治体に対して、登山者に警戒を呼び掛けるような要請はしていなかった。要するに、情報は役所の中だけで留まっていたわけだ。多くの登山者は、御嶽山はいつもと変わらない「平常」なレベルの山、と思い込んで登山したことになる。

 

気象庁自体も「その後、火山性地震の発生数が減ったため、特段、危険性が高まっているとは考えていなかった」(北川貞之火山課長)と説明している。しかし、御嶽山は1979年10月の水蒸気爆発による噴火以降、2001年5月に火口での小規模噴火、2007年3月にも小規模噴火している。24時間監視の対象となっているのも、こうした直近の噴火歴を踏まえたものであろう。

 

気象庁が国全体の噴火警報制度を導入したのも、この2007年の御嶽山の再噴火がきっかけだった。同制度は、気象業務法に基づき、噴火警報と、噴火予報を出すことになっている。仮に、気象庁が御嶽山の火山性地震の続発を受けて、レベルを「「平常」から一段階上の「火口周辺規制(レベル2)」に引き揚げていたら、火口周辺は立ち入り規制となることから、登山者の警戒心も違ったと思われる。

 

地震や火山、津波等は自然現象なので、予知が外れても国の責任ではなく、「運が悪かった」との見方が一般的にはあるようだ。しかし、そうした個人個人の人智では対応しきれない現象だからこそ、国に国土管理の責任と、そのための権限を委ねているといえる。東日本大震災の大津波も、事前の対策で被害を抑制できた側面が少なからずあった。ましてや、東電福島原発事故のように、津波の想定レベルを意図的に改悪し、それを行政が追認したようなケースは、明らかな人災である。

 

今回の御嶽山事故に、人災的要素がなかったかどうか。犠牲者の遺族が損害賠償責任を国に問うた場合、自然災害に対する国の管理責任が法廷で争われることになる。