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諫早湾:開門「最小で」 鹿野農相、長崎県訪問で方針伝達 (毎日)

2011-09-23 22:22:59

交換会後、中村知事(右)に頭を下げる鹿野農相(左)=長崎県諫早市で2011年9月23日午後5時45分、柳瀬成一郎撮影
国営諫早湾干拓事業(長崎県)の開門調査を巡り、鹿野道彦農相は23日長崎県を訪れ、調整池の水位の変動が最も小さい制限開門で実施する方針を中村法道知事に伝えた。開門に反対してきた長崎県と干拓地の農家に加え、全開を求める佐賀県や漁業者からも反発が予想される。

 

長崎県諫早市内で開かれた地元との意見交換会で、鹿野農相は「防災上、営農上、漁業上、最も影響の小さいという考え方(で決めた)」と述べ、国の方針に理解を求めた。中村知事は「地元を無視した決定には承服できない」と、方針を白紙に戻し再検討するよう訴えた。

 

諫早湾干拓事業では、潮受け堤防の南北二つの排水門開門を国側に命じた福岡高裁判決(昨年12月)の上告を菅直人首相(当時)が断念した。農水省は(1)最初から全開門(2)段階的に開き最後に全開(3)調整池の水位を制限する制限開門--の3パターンを想定。さらに(3)については調整池の水位変動幅を70センチ程度で管理する((3)-1)、20センチ程度にとどめる((3)-2)に分け、計4方法を検討してきた。

 

対策工事費は(1)と(2)で1077億、(3)-1で239億、(3)-2で82億円を見込み、最終的に最も費用がかからない方法を選んだ格好だ。同省は12年度予算の概算要求に関連経費を盛り込むことを検討している。

 

これに対し、干拓地の農家らは「開門すれば調整池に塩水が入るため農業用の代替水源が必要だが、地下水などを利用すると地盤沈下が起きる」と反発。長崎県も7月、開門に反対する意見書を九州農政局へ送った。

 

一方、開門を求めてきた漁業者らは「部分的な開門では効果が十分でない」と主張。佐賀県は段階的な全開門を行い、そのまま数カ月以上維持するよう求めている。【曽田拓、柳瀬成一郎】

 

◆諫早湾干拓事業を巡る経緯

(肩書はいずれも当時)

89年    事業着工

97年4月  潮受け堤防で諫早湾央を閉めきる

02年4月  短期開門調査を実施

08年4月  干拓農地で営農開始

6月  漁業者らが潮受け堤防排水門の開門を求めた訴訟で、佐賀地裁が3年以内に5年間の常時開門を命じる判決

7月  若林正俊農相が開門の影響を探る環境影響評価(アセスメント)実施を表明

10年12月 佐賀地裁に続き、控訴審の福岡高裁でも開門を命じる判決

菅直人首相が上告断念を表明

11年6月  農水省が四つの開門方法を想定したアセスメント中間報告を公表

開門を求めた別の訴訟で、長崎地裁が開門を認めない判決


交換会後、中村知事(右)に頭を下げる鹿野農相(左)=長崎県諫早市で2011年9月23日午後5時45分、柳瀬成一郎撮影



 

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110924k0000m040074000c.html