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大阪地裁 建設現場でのアスベスト訴訟で、国に3度目の賠償命令 建材メーカー責任は認めず(各紙)

2016-01-22 20:55:04

asbestosキャプチャ

  各紙の報道によると、大阪地裁は22日、建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み、肺がんや中皮腫などを発症した大阪府や兵庫県などの元労働者や個人事業主、遺族計33人が国と建材メーカー41社を相手取って、総額約6億9千万円の損害賠償を求めた訴訟で、一部の原告に対して国の賠償責任を認め、計約9746万円の支払いを命じた。

 

  裁判長は森木田邦裕裁判長。「1975年には、防じんマスクを使用させる義務を定めるべきで、規制権限を行使しなかったことは著しく合理性を欠く」などとして国の責任を認めた。ただ、焦点となっていた建材メーカーの責任は、認めなかった。

 

 国の責任認定では1995年に、クロシドライト(青石綿)とアモサイト(茶石綿)の製造・使用を禁止したのに、毒性が比較的弱いとされたクリソタイル(白石綿)は禁止しなかったことも違法とした。メーカー責任を認めなかったのは、加害行為者の特定が不十分、という判断。

 

 建設現場でのアスベスト被害によって、国と建材メーカーを訴える建設アスベスト訴訟は全国6地裁で起きており、今回の地裁判決は4件目。国への賠償命令は東京、福岡両地裁に続き3件連続で敗訴した。

 

 原告は建設現場で働いていた元労働者と、アスベスト被害で中皮腫等の肺がんを発症して死亡した労働者の遺族ら。原告は国に対して、赤面を有害物質に指定した1971年にはアスベストを使った作業については、防塵マスクの着用義務付けなどの適切な対策をとるべきだったのに、95年まで義務付けなかった点を、違法だと訴えてきた。

 

 メーカーについても、遅くとも1971年までには製造販売を停止すべきだったのに、代替品が開発・販売された後も、アスベスト製の建材を販売し続けるなど、危険な状況を継続した点を指摘していた。

 

 原告側は判決後の会見で「国の違法を認めたという点で勝訴と思う。本質的な問題にも一歩迫る判断だったと考えている」と述べた。一方の敗訴判決を受けた厚生労働省は「厳しい判決と認識している。関係省庁と協議した上で対応したい」とのコメントを出した。

 

 国の責任認定の一方でメーカー責任は棄却するのは、過去2回の判決と同一。その前の2012年5月の横浜地裁判決では原告敗訴だった。今月29日には京都地裁で5件目の判決が予定されている。