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日本気象協会など3社。 風力発電のバードストライクの早期検知システム開発。生態系への影響の早期把握可能に(RIEF)

2016-04-15 17:44:43

birdstrike2キャプチャ

 

 日本気象協会と電気通信工事事業者の日本電業工作(東京)、画像解析・処理のLinkPro(東京)の3社は風力発電施設の課題であるバードストライク(鳥の衝突)を早期検知し、陸上だけでなく海上でも効果のある新たなシステムを開発した。

 

 バードストライクは、飛行機や人工物に鳥が衝突する現象で、風力発電の場合も、渡り鳥などが風車の羽根や、支柱に衝突する事例が各地で起きている。

 

 ただ実際に、風車に鳥がぶつかったかどうかの確認は、これまでは目視でしかできず、発電への影響、生態系への影響の両方とも十分な対応をとりきれていない場合が少なくないという。

 

 こうした課題解決のため、今回のシステムは、風力発電施設に設置した赤外線カメラで風車に近づく鳥やコウモリ類等を自動撮影できる。その画像情報は日本電業工作が担当する長距離無線LANシステムFalconWAVE®2.4Gで、最長20km離れた場所にも伝送できる。

 

birdキャプチャ

 

 日本電業工作の無線システムは、通信の安定性に定評のある4.9GHz帯を利用しており、天候に左右されず安定した通信を確保できる利点がある。

 

 画像の分析処理はLinkProが開発した「鳥類検出ソフトウェア」で行う。同ソフトウェアは独自開発した高速アルゴリズムにより画像をリアルタイムに解析、画像も従来のものに比べて、より鮮明という。24時間連続運用が可能。

 

 

 新システムは、これから日本で普及が期待される洋上風力発電にも活用できる。洋上の場合、画像情報の無線伝搬は海面反射によるフェージング現象(電波の波長が干渉し合うことで電波の強さが変化する現象)などの影響で、長距離伝搬は困難とされてきた。しかし、今回のシステムでは、高利得・高指向性アンテナを活用することで、洋上でも長距離通信が可能になる。

 

 日本気象協会では、「新システムで風車周辺の鳥の動きの把握がより確実になり、風力発電の生態系への実態を踏まえた対策が取りやすくなる」とみている。

 

 システムの販売は、気象協会が全国展開していく予定。ただ、フル装備の場合だと、一台当たり1000万円前後になるという。このためリースとしての提供や、ウィンドファームなどの場合は、鳥が衝突し易い一番外側の風車に装備するなど、個々の風力発電施設に応じて対応していく方針だ。

 ただ、新システムではバードストライクの発生の把握が従来よりも正確になるが、鳥の衝突自体を防げるわけではない。今後は、バードストライク自体を防ぐ新システムの開発が望まれる。

 

http://www.den-gyo.com/news/pdf/20160414.pdf