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環境省 「水俣条約」を受け、大気への排ガス中の水銀排出規制ようやく導入へ。対象施設は石炭火力、廃棄物焼却炉など5分野(RIEF)

2016-06-09 14:32:53

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 環境省は水銀の排出規制を定めた「水俣条約」に基づき、石炭火力発電所やゴミ焼却場などから大気中に排出される水銀量についての排出基準を決めた。日本は水銀の水質汚染による水俣病を引き起こしているが、大気中の排出量については濃度が低いとして、これまで規制してこなかった。

 

 石炭や廃棄物などに含まれる水銀は、燃焼されることで細かい粒子やガス状に変化、推計で年10㌧以上が大気中に放出されているという。東京都の場合、23区の廃棄物焼却場での自主基準として、水銀濃度が排ガス1㎥当たり50μgとしてきたが、2010年以降、この基準値を上回って運転を止めたケースが9工場で17回起きているという。それらの高濃度排出の原因は特定されていないが、環境省では、水銀を含む血圧計や体温計などが可燃ごみに混入した可能性があると推察している。

 

 大気汚染防止法はすでに昨年6月に交付されており、今回は、環境省の中央環境審議会の専門委員会がまとめた規制対象施設や排出基準案を了承して施行令改正を行なう。

 

 対象となる施設は、石炭火力発電所のほか、産業用石炭燃焼ボイラー、鉛や亜鉛、銅、工業金などの非鉄金属製造精錬・焙焼プロセス、廃棄物焼却炉、セメント原料のセメントクリンカー製造施設。排出基準はこれらの施設ごとに定められる。基準は新規施設と既存施設に分けて設定され、既設施設に対する基準は業者に対する追加設備負担を考慮して、新規施設より緩く設定されている。

 

 石炭火力と産業用石炭燃焼ボイラーは、水俣条約では別々の扱いになっているが、環境省は、「両施設を明確に区別することは困難」として、同じ「石炭を燃料とするボイラー」として扱っている。しかし企業の自家使用の設備と、売電用の発電所は明らかに異なる経済的役割を持っており、まとめて扱うことで、石炭火力からの水銀排出量の評価・把握が外部には難しくなる可能性がある。対象となる国内の「石炭燃焼ボイラー」は約220施設という。

 

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 「石炭燃焼ボイラー」の排出基準は、図表の通りで、対象施設は「d熱面積が10㎡
以上か、またはバーナーの燃料の燃焼能力が重油換算一時間当たり50㍑ 以上」とした。排出基準は、排ガス1㎥当たり新規で8μg、既設はそれより2μg緩い10μg。バーナーの燃焼能力が小さい「小型石炭混焼ボイラー」は、新規が10μg、既設は15μg。

 

 都市にある廃棄物焼却炉については、新設が排ガス1㎥当たり30μg、既設は50μg、水銀回収産業の焼却炉については、新規50μg、既設100μgと設定された。国内の対象ゴミ焼却施設は約2400ヶ所に及ぶ。

 

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http://www.env.go.jp/press/102620.html