HOME4.市場・運用 |CO2から直接、バイオプラスチック原料を生産。明治大学などの研究チームが、ラン藻の水素合成酵素を遺伝子改変で制御。大量の有機酸増産に成功(各紙) |

CO2から直接、バイオプラスチック原料を生産。明治大学などの研究チームが、ラン藻の水素合成酵素を遺伝子改変で制御。大量の有機酸増産に成功(各紙)

2016-07-22 16:33:13

bioplaキャプチャ

 

 明治大学、神戸大学、理化学研究所などの共同研究グループが、地球温暖化の原因物質である二酸化炭素(CO2)をバイオプラスチックの原料に直接変換する方法を開発した。光合成を行なうラン藻が生産する水素を合成する酵素を遺伝子改変技術を加えることで、バイオプラスチックの原料となる有機酸のコハク酸と乳酸の増産に成功したという。

 

 石油などの化石燃料から作るプラスチックは、分解が困難で、海洋、土壌等で長期の汚染を広げている。そこで、生物資源から作るバイオプラスチック開発への期待が高まっている。

 

 研究チームは、光合成を行なう細菌でシアノバクテリアとも呼ばれるラン藻に注目した。ラン藻は光合成の家庭で、空気中のCO2を取り込み、バイオプラスチックの原料となるコハク酸や乳酸などの有機酸を合成する特徴を持つ。これまでの研究で、このラン藻を密閉した低酸素濃度の環境下で培養すると、コハク酸等の有機酸を細胞外に放出することがわかっている。

 

そこで、今回は有機酸の生産能力を高める開発を行なった。研究グループが着目したのがラン藻の特徴である水素生産能力である。ラン藻には還元力(対象物質に電子を与える能力)を使い、水素を合成する性質がある。この水素と有機酸は、細胞内の還元力を奪い合う「競合関係」にある。そのため水素を合成する酵素(ヒドロナゲーゼ)の活性を遺伝子改変で低下させて水素の生産能力を低下させると、コハク酸と乳酸の生産が、それぞれ5倍、13倍へと増えることを突き止めた。

 

 研究グループでは実用化のためには、今後、CO2からコハク酸、乳酸への変換効率を高めていくとともに、生産物の純度やラン藻培養の効率化、低エネルギー化、生産物の効率的な回収・精製方法の開発など、多角的な研究開発が必要としている。

 

 バイプラスチックは、生物由来のコハク酸「バイオコハク酸」を使うケースが増えている。ただ、生物由来の有機酸は、糖を用いた微生物の発酵で作られており、糖は食糧とも競合する課題があった。今回の方式は糖からではなく、CO2からの直接生産となるため、食糧との競合がないだけでなく、地球温暖化対策にも貢献するメリットがある。

bioキャプチャ
 

 研究成果は、近く米国科学誌「Algal Research」に掲載される予定。

http://www.meiji.ac.jp/koho/press/2016/6t5h7p00000lsi9c.html