米ナイアガラの滝の観光ツアー船に、フル電動船舶を開発・就航へ。水力発電電力を蓄電池で
2019-05-13 22:33:26
米国とカナダの国境にある景勝地、ナイアガラの滝に、電気エネルギーだけで動く観光船が就航する。スイスの重電メーカーのABBと米国のツアー会社「メイドオブザミスト(Maid of the Mist)」が共同で開発した。水力発電で起こした電力を船内の蓄電池に充電させて船を動かすという全米初のフル電動船となる。
就航する電動船は双胴船でモーターの出力は全体で400kW(563馬力)。総容量316kg時のバッテリーパック(蓄電池)を双胴に均等配置する。2つの独立した電力システムは相互にバックアップが可能になり、安定性が増すという。また、ABBの電力・エネルギー管理システム(PEMS)による制御で、船内のエネルギー使用も最適化する。
船は滝の周遊から戻って乗客が下船した間に、沿岸に設けた電力チャージステーションで充電する。フル充電にかかる時間はわずか7分。バッテリーの電力は水力発電で発電した電力だけだ。
電動観光船のメリットは、CO2排出量がゼロであるばかりではない。従来のディーゼルエンジン船につきものだったエンジン騒音や、振動、排気臭などもゼロ。自然の風と滝のミスト(霧)を存分に味わえる、という魅力も加わる。
ナイアガラの滝を船に乗って展望するツアーは、米国で古くからある人気の観光アトラクションのひとつ。観光船を運営する「ミスト」社が4月から11月初週までの間、30分間隔で運航する。年間約1600万人が楽しむという。
同社の社長、Christopher M. Glynn氏は「全米初のフル電動船を導入できることに、わくわくしている。ABBと連携したのは、同社の海洋システム技術と、持続可能な輸送システムのための効率的で革新的な技術を評価した」と述べている。
ABBの産業オートメーションビジネスの代表、Peter Terwiesch氏は「メイドオブザミスト社の決断は輸送の未来における新たな時代に向けた決断であり、ABBは、地球を『消費』しないで、エネルギーを供給することにコミットしてサポートしていく」と評価。
そのうえで、「ナイアガラでのCO2排出量を減らすことは、単に有名な観光地にとって重要であるだけではなく、持続可能なモビリティ技術がすでに現時点で利用可能になっていることを示す点でも重要だ」と強調している。