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海藻と波力発電、自然に学ぶエネルギー(National Geographic)

2012-04-22 00:32:42

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長い葉部をたなびかす大型の海藻ブルケルプ(bull kelp)。海岸沿いの激しく揺れる水面下で生きるメカニズムは、エネルギーをより効率的に利用する方法を人類に示しているのかもしれない。下は、このような海藻の動きをヒントに開発が進められている波力発電装置バイオウェーブ(BioWAVE)のイメージ図。

 海藻が持つ優れた仕組みを参考に、よりクリーンで効率性の高いエネルギーシステムを設計しようとする研究が進んでいる。「バイオミミックリー(生物模倣)」の専門家は、“光合成のエンジン”である植物をはじめ、昆虫やクジラといった動物の優れた機能を技術に生かそうとする。人類が持続可能な文明社会を構築する方法を、生物から学ぶ取り組みだ。
バイオミミックリーは、自然からインスピレーションを得たデザインを意味する。「人類が現在取り組んでいる問題の多くは、38億年以上の進化の過程で自然がすでに解決している」という考え方だ。エネルギーは世界が直面している最も大きな課題の一つであり、環境との調和を構築するシステムを目指すのであれば、“自然”に答えを求めるのも当然のことだろう。

牛追いの鞭(bullwhip)から名が付いたブルケルプは、最も頑丈で弾力性に富む海藻のひとつ。海底の根っこから葉部の先まで約30メートルも成長する。海藻は光合成でエネルギーを生み出すが、バイオパワー・システムズ(BioPower Systems)社は、その動きにヒントを見いだした。波によって上下する静かな運動エネルギーを、商業的にシステム化したいという。

オーストラリアのシドニーに本社を置くバイオパワー・システムズは、南東部ビクトリア州の町ポートフェアリーの沖で波力発電装置バイオウェーブ(BioWAVE)の実証実験を行う計画を立てている。1400万豪ドル(約11億8000万円)の費用を見込んでいるが、2011年後半、ビクトリア州政府から500万豪ドル(4億2000万円)の支援を得た。

実験規模は250キロワット、一般的な商用風力タービンと比べて発電能力は5分の1程度になる。電力網へ接続され、近隣地区あるいは学校のような大型施設への電力供給を目標にしている。最重要課題はシステムの効率化だ。同社は5年にわたってタンク内試験を繰り返し、実証実験に向けてシステムの規模を拡大してきた。

バイオウェーブは、“茎”のような土台に取り付けられた“浮き”で波のエネルギーをとらえて発電する。浮きは波に合わせて揺れ、最大限のエネルギーを電力に変換することが可能だ。その機能性も海藻からヒントを得ている。バイオウェーブは大きな嵐が来ると海底に横倒しになり、海が穏やかになるのをじっと待つ。波力発電の設備は波が荒すぎると破損しかねないため、これは重要な機能だ。鋼製のケーソンなどで海底に固定する必要もなく、システムのコストは低く抑えられているという。

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