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英国の廃炉原発周辺で がん発生率有意に上昇、乳がんは約5倍増。不十分な廃炉処理が原因か。研究論文が指摘(FGW)

2015-06-09 22:40:38

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英国ウェールズで22年前に廃炉になった原発の周辺住民のがん発生率が、通常より5倍高いとする研究が発表された。同原発は廃炉処理が不十分なままとされ、廃炉処理による放射性物質撤去の難しさが英国内でも議論を呼んでいる。

 

問題の原発はウェールズ北部のグウィネズ地方のトロースフィニッドに建設された英国で唯一の内陸部立地の原発2基。炭酸ガスを原子炉冷却材として用いる炭酸ガス冷却炉で、マグノックス炉ともよばれる。1965年に操業を開始し、93年7月に廃炉となった。

 

同地域周辺の放射能濃度や、住民の健康状況等を検証した環境科学者のDr Chris Busby(ラトビア科学アカデミー)らの調査によると、周辺住民の乳がん発生率は、廃炉原発の風下地域では、対照地域に比べて5倍の高さだったという。他のがんについても倍の発生率が確認されたとしている。

 

原発は同地域のリン湖のほとりに建設された。湖の水を冷却水として活用したほか、原発からの廃棄物の湖への排出も指摘されている。このため湖の底部には相当な量の放射性物質がそのまま残留しているとみられている。

 

 Busby氏らの調査では、湖には南西の風が支配的で、その風下の住民の90%の健康状況を長期にわたって調べた論文が、今月、Jacobs Journal of Epidemiology and Preventive Medicineに掲載された。

 

 炭酸ガス冷却炉は、他のタイプの原発に比べて放射能漏洩率が高いとされているうえ、原子炉からの排水がすべて湖に流入、廃炉作業において湖底部のヘドロなどの除去が行われていないことなどが原因になったとみられる。

 

研究論文は、原発の川下に居住する住民がこれらの残留放射能の被爆をしたことは非常に明確だ、としている。乳がんの発生は、60歳以下の比較的若い女性の発生率は対照群に比べて、ほぼ5倍になっている。

 

また、同湖で採取された魚を摂取している群では、リスクは倍増しているとしている。前立腺がん、白血病、中皮腫、すい臓がんなども、顕著に増加しているとしている。2003ー05年の間にがんと診断された人は、全体で38人。対照群は半分の19.5だった。

 

研究論文は、「こうした明白な結果は、原発政策を推進する政治的決断の結果だ」と指摘している。トロースフニッド原発の管理は、英原発廃炉庁(NDA)が保有するマグノックス社が担っている。英政府は、同論文の科学的分析に対する政府の見解をまとめるため検討中とのコメントを出している。

 

http://www.walesonline.co.uk/news/wales-news/welsh-nuclear-power-station-responsible-9415019