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昨年再稼動の九州電力川内原発 事故時の住民を守る避難基準値測定のモニタリングポスト、半数が機能不十分。避難判断に役立たず。高浜原発も一部で不備(各紙)

2016-03-14 13:04:22

sendaiキャプチャ

 

 各紙の報道によると、昨年夏に再稼動した九州電力川内原発(鹿児島県川内市)の周辺に設置されている放射線監視装置(モニタリングポスト)のほぼ半数が、事故時の住民即時避難を判断するために必要な、高い放射線量を測定できない機能であることがわかった。福島原発事故の経験があるのに、緊急時を想定しない体制で、再稼動を認めた政府の甘さが改めて露呈した。

 

 報道によると、福島原発事故後、政府は原子力災害対策指針を改定した。原発から5km圏の住民は大事故が起きた場合は即時避難し、5~30km圏の住民はまず屋内避難した後に、モニタリングポストで測定する放射線量の動向をみて避難するかどうかを、国が判断するという手順になっている。

 

 その場合、毎時20μシーベルトの放射線量が1日続いたら1週間以内に避難し、毎時500μシーベルトに達する高濃度の場合は、すぐに避難することになる。こうした判断に資するため、国は原発から30km圏の市町村には避難計画の策定を指示し、また道府県にはポストの設置と、地区ごとに避難の判断基準となるポストの設置を整備するよう求めている。

 

 政府の指示を受けて、地元の鹿児島県は、川内原発1号機の再稼動に合わせて、5~30km圏に判断の基準となる48台のポストを設置した。しかし、このうち22台は毎時80μシーベルトまでしか測定できない機種で、いざという時の判断に必要な高濃度放射線量を測れない。つまり、すぐに避難する判断には役に立たないことがわかった。

 

 朝日新聞の報道では、鹿児島県原子力安全対策課は「緊急時には近い別のポストで測ったり、(持ち運んで据え付ける)可搬型ポストを配備したりするので問題ない」と説明しているという。ところが、県が配備した可搬型ポスト44台のうち30台は毎時100μシーベルトまでしか測れないという。

 

  この県の説明も原子力規制庁が作成した指針に「違反」している。指針の補足資料では、放射線量の測定は、固定されたモニタリングポストで平常時から測定することを前提としている。これは、継続的に測ることで急な放射線量の上昇を速やかに把握するためだ。

 

 規制庁の規定は、県が指摘するような可搬型のポストでは、地震などで道路が寸断された場合に必要な場所で測定できない恐れがあることも考慮している。福島原発事故時の混乱を考えれば、当然の措置である。

 

 鹿児島の川内原発だけではない。関西電力高浜原発の場合も、隣接する京都府はモニタリングポスト整備計画として、規制庁の「5キロ間隔程度」との目安に基づき、5~30km圏では、おおむね小学校区ごとに41カ所にポストを設置する計画を立てた。しかし、同原発が3号機に続き4号機が再稼働した2月末時点で66%にあたる27カ所で未設置という。

 

 報道によると京都府環境管理課は「設置場所の選定を進めていたが、先に再稼働してしまった」と説明し、今月末までに残りの設置を終えるとしている。再稼動直後に原子炉が不安定な運転に陥ったりするケースもあるが、そうした「万一の場合」への備えをするための手順がなおざりにされている。「フクシマの教訓」を、たった5年過ぎただけで、すっかり忘れ、住民不在の「お役所仕事」に戻っているように思える。