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温暖化の影響による自然災害増で、損保3社の2018年度の保険金支払額が過去最悪の1兆円に。来秋にも火災保険料の保険金支払いを引き上げ(各紙)

2018-11-14 06:56:04

taifuuキャプチャ

 

 各紙の報道によると、大手損害保険3グループはこの夏に全国で相次いで発生した風水害の影響で、2108年度の合計保険金支払額が1兆円規模になる見通しだ。風水害被害では過去最悪。3損保は収支悪化をカバーするため、2019年秋に火災保険料を引き上げる方針だ。温暖化の進展による自然災害増が引き金となり保険料を引き上げるのは4年ぶり。

 

 日本経済新聞が報じた。大手3社の支払額は10月末時点の推計で計1兆円を超えたとみられる。グループ別では、MS&ADインシュアランスグループホールディングスが4000億円超、東京海上HDとSOMPOHDがいずれも3000億円台半ば程度という。西日本豪雨や大型台風など風水害の影響がもっとも大きい。

 

 日本損害保険協会によると、台風や豪雨など風水害に伴う損保業界の保険金支払額は、3つの大型台風に見舞われた2004年度が過去最高の7449億円だった。今年度は大手3社分だけで、過去の記録を大きく上回る見込みだ。

 

 今年度は7月に西日本豪雨が発生して以降、台風21号、24号と相次いで大型台風が来襲し、各地に大雨・集中豪雨をもたらした。9月の台風21号は関西国際空港が一時閉鎖になるなど、関西を中心に大きな被害引き起こした。こうした風水害が今後も続けば、家計や企業の保険料負担がさらに増加していく可能性がある。

 

 風水害による保険金の支払い額は、火災保険や自動車保険による支払いが中心。家屋や工場の浸水、建物の損壊、自動車の修理費などだ。損保関係者によると、「家財や工場の機械類が水に漬かったケースでも被害が膨らんでいる」という。

 

 特に台風21号は保険金支払額が全体の約半分を占めるとの見方もあり、単独の風水害としても過去最大級の支払いになりそうだ。今後、冬には大雪による災害も予想される。そうなると、2018年度の最終的な支払額は1兆円を大きく上回る可能性もある。

 

 火災保険は近年の災害多発によって収支が悪化している。損保各社で構成する損害保険料率算出機構は6月に、各社が保険料をはじく基となる料率を平均5.5%引き上げた。実際の来秋の上げ幅は今年夏以降の風水害の被害状況やコスト削減努力なども踏まえ各社がそれぞれ判断する。5%前後が一つの目安とみられている。

 

 地震保険の保険料は、東日本大震災などを受けて19年1月に全国平均で3.8%上がる予定。消費者や企業は災害に備える保険料の負担が重くなる。ただ、温暖化対策ではグローバル規模で義務的対応に向けた足並みの一致がカギで、保険会社の自主的な対応だけでは限界がある。

 

 大手3社は気候変動リスクをカバーするため、国内の大規模災害に備えた積立金の異常危険準備金を取り崩して支払い増に対応する。加えて再保険で保険金の一部は回収できるため、18年度の決算上の支出は実際の被災者への補償額と比べれば少なくなる見込み。このため業績への影響は限定的だ。

 

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181114&ng=DGKKZO37703460T11C18A1MM8000