HOME4.市場・運用 |スウェーデンの公的年金AP2 保有資産から石炭火力主体の28電力会社株をすべて売却へ。規制リスク増大等で金融リスク高まる(RIEF) |

スウェーデンの公的年金AP2 保有資産から石炭火力主体の28電力会社株をすべて売却へ。規制リスク増大等で金融リスク高まる(RIEF)

2015-12-03 00:03:25

AP2

スウェーデンの公的年金であるAndra AP-fonden (AP2)は、石炭火力発電などで電力を供給している28の電力会社株をすべて売却した。気候リスクとともに、金融リスクも高まっているためとしている。

 

 AP2の保有資産額は2940億SEK(スウェーデンクローネ:約318億ユーロ)。このうち今回、売却を決めた発電所投資額は6億7000万SEK(約7200万ユーロ)に相当する。

 

 同年金は投資ポートフォリオを気候変動の視点でリスクアセスメントを実施しており、2014年のリスクアセスメントでは12の石炭関連企業と、8の石油・ガス製造企業株を売却(Divestment)した。今回も気候変動リスクアセスメントに基づいて評価した。

 

 電力会社株の売却は、同年金が保有している電力株全体の約4分の1に当たる。これによって、同年金の電力セクター投資の金融リスクを減少させることができるとしている。

 

 石炭などの安い 化石燃料を主とする電力会社は収益の良さが売り物となっていた。日本でも来年4月の電力小売り全面自由化を前にして、石炭火力発電による売電計画が急増しているのは、安いコストで収益をあげることが可能、との判断に基づく。

 

 また、年金等の機関投資家にとっても、石炭火力発電は収益性が高く、一つの安定投資先とみなされてきた。しかし、そうした収益性も、気候変動リスクの高まりで、将来的には事業リスクで相殺、あるいはリスクの方が上回る可能性が出ている。

 

 というのは、石炭火力発電などは、今後のCO2排出規制の強化と、競合する再生可能エネルギー発電の急速なコストダウンなどで、化石燃料だけでなく、発電所も“Stranded Assets(座礁資産)”化する可能性がある。そうなると、金融リスクも増大する。

 

 AP2 のChief Executiveである Eva Halvarsson氏は、「われわれは石炭発電株を売却して戻ってくる資金を、他の銘柄に投資することで、長期的な投資価値は、従来より増大する」と説明している。ただ、同氏は、再投資先の産業、企業は特定していない。

 

 同年金は昨年実施した石炭産業などからのDivestment資金15億SEKをキャッシュ化し、それらの資金を再生可能事業への投資や、グリーンボンド投資に振り向けている。今年上半期のAP2のグリーンボンド投資ポートフォリオリオは年初から80%も伸びて34億SEKに達した。また再エネファンドにも数十億SEKの投資を増やしている。

 

 AP2は引き続き、気候リスクが年金のポートフォリオ全体に及ぼす影響を定期的に評価していく方針という。日本の年金や保険などの長期投資家も、自らの投資ポートフォリオを気候変動の視点でリスクアセスメントを実施する段階にきているといえる。

 

http://www.ap2.se/en/Financial-information/Press-releases/2015/the-second-ap-fund-continues-to-assess-the-financial-impact-of-climate-risks-and-will-divest-from-28-power-utilities/