2015年の世界のCO2排出量 2年連続で横ばい。世界経済の成長と、温室効果ガス排出量の「デカップリング化」明瞭に。IEAの調査で判明(RIEF)
2016-03-17 00:22:24
国際エネルギー機関(IEA)は16日、2015年の世界の二酸化炭素(CO2)排出量が321億㌧と2年連続で横ばいだったと発表した。
CO2排出量の横ばいは、排出増加要因となる世界経済は成長したものの、CO2を排出しない再生可能エネルギー利用が拡大したためという。IEAは「温暖化対策と経済成長のデカップリング(切り離し)」が明らかになった、としている。
これまで産業界を中心に、「温暖化対策と経済成長を両立させるのは難しい」との温暖化対策に慎重な見方が根強くあった。しかし、IEAのFatih Birol事務局長は「2015年のCO2濃度の横ばいは『歓迎すべき驚き』だ。温暖化ガスと経済成長はデカップリングしていることがわかった」と述べている。
また「昨年末に合意された地球温暖化対策の新枠組み『パリ協定』に続き、気候変動に対するグローバルな戦いをもう一つの推進力だ」と評価している。
IEAによると、2015年のCO2排出量は321億㌧で、2013年以来ほぼ横ばいが続いている。これは同年に導入された新規電源のうち90%を再生可能エネルギー発電が占めたことなどが、大きな影響を及ぼしたとみている。
導入された新電源のうち、半分は風力発電が占めた。一方、昨年の世界経済は平均3%以上の成長を続けた。このことから、経済成長と温暖化ガスの排出量の相関性は弱まっている、と指摘している。
IEAは過去40年以上にわたってグローバルなCO2排出量データを開示してきた。この間、排出量が横ばいあるいは、前年より低下した時期は4回あった。
1980年代前半、1992年、2009年、そして今回だ。このうち過去の3回はグローバル経済が低迷していたことが原因だった。ところが、今回のCO2排出量横ばいは、経済成長が続く中で実現している。
国際通貨基金(IEA)の推計でも、世界のGDPは2014年が3.4%成長、15年が3.1%成長と順調に成長している。
地域別にみると、特に中国と米国というCO2排出量の多い2か国で、エネルギー起源のCO2排出量が低下している。中国での排出量は1.5%減だった。同国での石炭使用が二年連続減少したのと歩調を合わせた。
中国の石炭利用は急低下している。低エネルギー消費産業化に向けた政府の経済再生策と、電力事業での脱石炭化が進んだことが大きい。石炭利用は、2015年の電力利用の70%以下となった。4年前の2011年に比べ、10ポイント下がったという。
同じ4年間に、低炭素発電源は19%から28%に9ポイントアップした。増加の大半は水力と風力とされる。
一方、米国の排出量も前年比2%減だった。電源の石炭から天然ガスへの大規模な転換が起きているためだ。
ただ、この二大排出国での排出量の減少も、経済成長の著しいアジアや中東などの他の国々での排出量の増加と、欧州での緩やかな増加で相殺された格好だった。