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電力・ガス取引監視委。電力自由化による東電の送電データトラブル問題で、東電の送電部門担当会社に業務改善勧告。「東電からの切り替えを防ぐサボタージュか?」(各紙)

2016-06-18 22:06:18

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 電力・ガス取引監視等委員会(八田達夫委員長)は17日、東京電力に初の業務改善勧告を出した。4月の電力小売り自由化で東電から契約を切り替えた世帯などの使用量データが、システムミスで送付できない状態が長期化しているためだ。東電グループの「サボタージュ」の可能性が濃厚。自由化を電力会社任せとした経済産業省の「政策ミス」も浮上している。

 

 業務改善勧告を受けたのは東電の送電部門を担当する東電パワーグリッド(PG)。同社は送電業務を担い、東電だけでなく他の電力会社の契約分も「託送業務」として、利用者の電力使用量を通知する業務を担っている。

 

 ところが同社によると、システムの不具合で、東電から契約を変更した消費者の使用量のデータを、同社のシステムでは送れず、契約を東電から他の電力会社に切り替えた世帯などの約2万件の電気料金が円滑に計算できなくなっているためだ。

 

 東電PGのシステムトラブルで支障が起きているのは4種類のデータ処理という。需要家の宅内に設置したスマートメーターからのデータや、旧型のメーターからの移行情報を正しく取得できないほか、スマートメーターで検針したデータの欠落、検針データを元に電力使用量を確定させる部分でも、不具合があるという。要するに、ほとんど対応できないということだ。

http://rief-jp.org/ct4/62187?ctid=72

 

  6月7日の時点で電力の需要データに関する未通知の件数は約2万件にのぼる。さらに太陽光発電などの発電量のデータも託送業務システムで確定して事業者に通知するため、同様に未通知件数が6月7日の時点で約2万件あり、合計で約4万件に達する。

 

 電力自由化は4月1日から始まっているが、経済産業省からの報告徴収で同社が回答したのは、ほぼ2カ月後の5月31日が最初。その後6月8日にも報告したが、自由化から3ヶ月を経た現在でも問題解決には至っていない。

 

 この東電側のデータ送信ミスにより、小売電気事業者や発電事業者に通知すべき使用量や発電量の確定値を適正に通知できない事態が各地で発生、各事業者は電気料金の請求や関連する費用の支払い・請求を予定どおりに実行できないという不具合が起きている。

 

 結果的に、「東電から契約を切り替えたために不具合が生じた」事態となり、事業者の信用問題も起きているという。他の関西や中部圏では、同様の問題はほとんど起きておらず、東電が営業基盤とする首都圏で集中して不具合が発生している。このため「東電からの切り替えを妨害する、東電グループのサボタージュではないか」との疑念まで生じている。

 

  監視委の八田委員長は、「切り替え先の小売電力事業者の信用に影響が生じている。誠に遺憾だ」と指摘している。監視委は同日午後、東電PGの武部俊郎社長を呼びつけて勧告書を手渡した。

 

 監視委では、7月1日までに改善計画の提出を求め、東電側が問題解決ができない場合、経済産業相に報告し、経産相が業務改善命令を出す可能性がある。

 

  監視委が事態を重く見たのは4月に始まった電力自由化の成否を左右しかねないからだ。「新規参入の小売事業者は請求書すら満足に出せない」といった不満が消費者の間で高まれば電力大手から切り替える動きが滞る。契約が大手に戻ることも考えられる。

 

 勧告を受けた東電PGの武部社長は勧告を受けた後、記者に対して、「自由化で(切り替えた消費者が)損することはないようにしていきたい」と述べたが、実際にいつ問題を解決できるのか、これまでの不具合の影響を受けている利用者にどう対応するのか、などの点については言及しなかった。

http://www.tepco.co.jp/pg/index-j.html