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既存電力会社2社、発電事業者の送電線接続で、法外な費用請求。電力・ガス取引監視委が是正指導。企業名は明かさず(RIEF)

2016-06-23 16:35:01

denryokuキャプチャ

 

 各紙の報道によると、電力・ガス取引監視等委員会は、新規参入の発電事業者から送電工事の費用を過徴収したとして電力大手2社に是正を指導した。2015年9月の委員会設置後、工事費をめぐる指導は初めて。過徴収すると発電事業者の新規参入を阻みかねないと判断した。

 

   日本経済新聞が報道した。同委員会は是正指導した2社の社名は明らかにしていない。日経も「電力大手10社のいずれか」と書くだけで、調べた形跡はない。電力自由化の趣旨を歪める既得権保有の既存電力会社の不正な経費請求を匿名にする必要はない。10社のうち2社の名前を突き止める能力のない新聞社も、仕事を放棄したも同然。「週刊文春」に頼む以外ないのかも知れない。

 

 報道によると、電力会社の不正な経費請求は同委員会の15年度の監査で見つかったという。太陽光や火力などの発電事業者が新規参入する際、送配電網を持つ電力大手に工事費を支払い、発電施設と送配電網をつなぐ電線を整備してもらわねばならない。ところが既存電力会社の1社は発電事業者から必要な工事費の1.5倍の1億2千万円を請求、実際に受け取っていた。もう1社も、別の事業者の要請に対して通常の費用を2千万円を上回る請求をして受け取っていたという。

 

 いずれも事後に返金したと説明している。報道では、委員会は「最初に高額な請求をすると発電事業者が参入をあきらめる可能性がある」と問題視した、としているが、既得権を持つ事業者が自らに有利なように発電事業者との契約条件を恣意的に扱うのは、独占禁止法に抵触する可能性もある。

 

 既存電力会社の”横暴”は、4月の電力小売自由化による販売部門でも起きている。東京電力の送電部門を担当する東京電力パワーグリッドが、契約を新電力事業者に切り替えた世帯の使用データの送付を、「システムミス」として、自由化後3ヶ月近くが経過するのに不具合のままにしているケースが、今も、約4万件もある。

http://rief-jp.org/ct4/62292?ctid=72

 

 そもそもの問題は、電力自由化で発電部門、販売部門への新規参入を認めながら、中核となる送電部門は既存の電力会社のネットワークを前提にしている自由化政策のいびつさにある。既存電力会社が、自社の顧客を奪うライバルの発電事業者や販売事業者に対しても「公正中立」に、対応することを期待するのが無理との見方もある。

 

 送電部門を法的にも既存電力とは別会社に切り替えない限り、送電網をグループ内に抱える既存電力会社が、陰に陽に、ライバル会社に嫌がらせや不合理な要請を突きつける事態を排除するのは難しい。

 

 では、不法な費用請求をした既存電力2社はどこなのか。ちなみに、ネット情報を調べると、九州電力がこの3月に、佐賀県警に対して超過電気料金の請求をしていたことが発覚したとの報道があった。超過請求額は約626万円にのぼる。契約の確認ミスで撤去した信号機などの定額制料金を徴収したり、自治体の電気料金を県警から徴収したりしていた。

 

 九州電力は、今回の不正請求が自社でないならば、疑われないように、その旨、宣言したほうがいい。他の電力会社も同様だ。最後に、宣言できない既存電力会社が、是正指導を受けた先ということになる。

http://www.sankei.com/west/news/160315/wst1603150092-n1.html

http://www.emsc.meti.go.jp/