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英国の大学で化石燃料関連企業から投資資金を引き揚げるDivestment宣言が増加。英国全体の4分の1相当の43大学が宣言。米国の大学より多く、世界一に。日本の大学は(?)(RIEF)

2016-11-24 11:07:37

Divestmentキャプチャ

 

 英国の大学が自らの資金運用の対象から、石油やガス、石炭などの化石燃料関連企業を除外するDivestment(投資引き揚げ)の動きが広がっている。全大学の4分の1に当たる43校が宣言したという。

 

 大学当局に対してDivestment 活動をとるよう活動している学生団体の「People & Planet」がまとめた。43校全体で100億ポンド(約124億㌦=約1兆3600億円)以上の資産が対象になる。

 

 投資資産引き揚げと、2020年までにCO2削減計画を打ち出した英国大学は、オックスフォード、エジンバラ、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)、ケント、サセックス、リンカーン、カーディフ・メトロポリタン、ブライトン、ニューキャッスルなど。

 

 ロンドン大学のキングスカレッジは当初、拒否していたが、同大学の卒業生でノーベル平和賞を受賞した南アフリカの平和活動家、デズモンド・ツツ師が、化石燃料産業へのボイコットを呼び掛けたことなどを受けて、9月に方針を転換、Divestmentの流れに加わった。

 

 Divestmentの宣言は、米国の大学で始まった。ただ、現在、米国では35大学にとどまっており、英国の大学が最大の勢力になっている。大学以外の金融機関や教会などを含め、現在、世界全体では少なくとも2兆6000億㌦の資産がDivestmentの対象になっているとされる。

 

 People & Planetでは、英国の大学が米国の大学をDivestment宣言で上回ったのは、米国には温暖化懐疑論や否定論者が一定の勢力を保っており、彼らの影響力が社会にも反映しているとみている。英国では過激な懐疑論者は少ないという(英国人は米国人ほどバカではない、という自負か)。

 

 地球温暖化の進展で温暖化対策が厳しくなると、化石燃料資源の多くは利用が制限ないし停止されるリスクがある。つまり、Divestmentは温暖化進行に手を貸さないという道義的な意味だけではなく、資産運用のリスク対応という経済的な視点からも重要性が高まっているわけだ。

 

 People & PlanetのAmoge Ukaegbu氏は「英国の大学は気候変動問題を解決する最先端の研究・活動で世界のリーダーとなっている。将来の社会を持続可能にすることに特別の責任を持っている。なので、そうした大学がモラルの面でも、金融的な面でも持続可能でない産業に背を向けることは何ら驚きではない」と指摘している。

 

 ただ、43校がDivestmentを鮮明にしたものの、残りの4分の3の大学は従来通りの運用姿勢を貫き、CO2削減策も十分に示していないことになる。このためPeople & Planetでは、英国の全大学150校を温暖化対策の十分度でランキングし、公開する活動も行っている。

 

 在校生や卒業生、さらに大学の受験生らに、当該大学の「グリーン度」が一目瞭然となり、ライバル校との違いもわかる。「学生の将来」「社会の将来」を考えている大学当局かどうかを「見える化」することで、大学の資産運用の変革を促す考えだ。

 

 日本の大学生たちも、自分たちが支払っている授業料や入学金が、大学当局によってどう運用されているのかをもっと知る必要があるだろう。日本の大学でも People & Planetのような活動が期待される。

 

https://peopleandplanet.org/university-league-2016-tables