HOME |北極で異常な高気温、11月中旬の平均気温を20℃も上回る記録が継続中。「北極海、いまだ再凍結せず」。気候変動の「悪循環」が拍車(AFP) |

北極で異常な高気温、11月中旬の平均気温を20℃も上回る記録が継続中。「北極海、いまだ再凍結せず」。気候変動の「悪循環」が拍車(AFP)

2016-11-25 17:41:41

northpoleキャプチャ

 

 【11月25日 AFP】北極域の異常な高気温は、大量の熱を蓄えた海水と北向きの風によって引き起こされており、それに気候変動の「悪循環」が拍車を加えているとの研究報告が24日、発表された。

 

 北極の天候の変化を1時間ごとに追跡記録しているデンマーク気象研究所(DMI)が発表した観測データによると、極氷冠上空の大気の温度が、平均を9~12度上回る状態がこの4週間続いているという。

 

 DMIの気候研究者のマルティン・シュテンデル(Martin Sendel)氏によると、北極点上空の温度は先週、数日間にわたって0度を記録し、11月中旬の例年の水準を約20度上回ったという。

 

 シュテンデル氏はAFPの取取材に、人工衛星による観測データ収集が開始された1979年以降の記録としては、先週の気温はずば抜けて高いと述べ、「現在観測されている状況は、極めて異常だ」と付け加えた。

 

 北極の海は夏季の海氷融解で露出するが、例年のこの時期には、その表面に毎日数千平方キロの氷が張り、再び凍結する。だが今年は、それがまだ起きていない。少なくとも例年と同様のペースでは起きていないと、シュテンデル氏は指摘する。

 

 また、電話での取材に同氏は、「氷が通常通りに成長していないだけでなく、暖気の流入によってさらなる融解が起きていた」と説明した。

 

 米国立雪氷データセンター(NSIDC)の報告によると、10月の海氷面積は約640万平方キロで、観測史上最小だったという。北極圏でも、2016年9月16日に約414平方キロと史上最小を記録した。

 

 科学者らによると、いくつかの要因が、10月下旬以降の北極の異常な高温を引き起こしているのだという。最も直接的な要因は、欧州西部とアフリカ西海岸沖から吹き上がってくる暖風だ。

 

 仏気候環境科学研究所(LCSE)の科学者、バレリー・マソン・デルモッテ(Valerie Masson-Delmotte)氏は「この熱を運んでくる暖風は、一時的なものだが、ほぼ前例のない気象現象だ」と説明した。

 

 暖風は、24日以降になってようやく和らいできたという。

 

ミラー効果

 

  また、その他の要因として、記録的な強さとなった太平洋のエルニーニョ(El Nino)現象が挙げられる。

 

 だが、いくら強力であっても、断続的なこれらの要因に拍車をかけているのは、中でも最大の要因である地球温暖化だと専門家らは口を揃える。

 

 英気象庁(Met Office)極地気候部の主席研究員、エド・ブロックリー(Ed Blockley)氏は「北極の海氷の長期的な減少は、気候変動に原因があると考えられる」と話した。

 

 温室効果ガスが熱を吸収することで発生する人為的な気候変動により、地球の平均表面温度は、産業革命前との比較ですでに1.0度上昇している。

 

 ところが北極圏では、温暖化が2倍のペースで進行している。この原因の一端は、科学者らが「正のフィードバック」と呼ぶ悪循環にある。

 

 太陽の熱放射は、白い雪や氷の上に降り注ぐと、その約80%が宇宙空間に反射される。デルモッテ氏はこの現象を「ミラー効果」と呼ぶ。だが、露出部分がはるかに拡大している深い青色の海に太陽光線が当たると、その熱の80%が反射されずに海水に吸収され、そのまま蓄積される。

 

シュテンデル氏は「海氷面積を調べれば、この悪循環がすぐに確認できる。そこには明らかな減少傾向が存在するからだ」と話す。

 

 そして短期的には、この露出した海水が、氷の再形成のペースを減速させている。0度を下回る程度の海水温は、「そこにあるはずの氷と比較すれば」はるかに高温だと、シュテンデル氏は言う。

 

 現在は無氷海面となっているが、その領域に氷の厚い層があれば、上空の気温は「通常、マイナス30度から40度になる」という。そのため、氷量の減少は、広範囲にわたる影響を及ぼす恐れがある。

 

デルモッテ氏は、AFPの取材に「それにより、温暖化が全般的に増幅され、特に近隣の大陸での温暖化が深刻化する」と指摘した。

 

 北極海に隣接する大陸の一つであるデンマーク領グリーンランド(Greenland)には、融解が急速に進んでいる巨大な氷床が存在する。この氷床には、地球の海水面を数メートル上昇させるほどの大量の水が含まれている。

 

http://www.afpbb.com/articles/-/3109158?pid=0